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教育医療

Health and Death Education Apl.2000 vol.26 No.4

 

4月から新たな挑戦を

 

日本では小学校から大学まで、4月をもって新学期としています。

3月の別離や旅立ちのあと、新たな気持ちで迎える入学式や始業式、企業でも新入社員を迎えて、清々しいスタートをきります。

また外に目を向けると、草花や木々が芽を吹き、暖かな陽射しが自然の息吹を感じさせます。日本においては、4月はまさにすべての生命がはつらつと成長していく門出の月といえます。

お正月は、特に2000年を迎えた今年のお正月は、21世紀へ繋ぐ歴史的な記念の年として新たな気持ちで迎えましたが、新しい学習や仕事を始める事初めとしては、この4月がスタートラインといえましょう。

ところで、スタートラインにつく選手は、それが100mの短距離走であろうと、フルマラソンであろうとゴールがあります。始まりには必ず終わりがきます。このことを16世紀の天才といわれたレオナルド・ダ・ヴィンチは、「初めに終わりのことを考えよ」といっています。

さらに私は、『教育医療』を読まれる学生、社会人、また第二の人生を迎える方に「高い山を仰いで、前進しなさい」という言葉を贈りたいと思います。その高い山の頂は、日々の生活の中で、雲に覆われて見えなくなることがあるかもしれません。しかし、自分自身の心の中に、その山の姿をはっきりと描いて、その存在を確信し、心の眼を開いていれば、消えてなくなることはありません。雲に覆われて姿が見えなくても、富士山の存在を疑う人は誰もいないのです。

旧約聖書の詩編第121篇には「わたしは山に向かって目を上げる。わが助けはどこからからくるであろうか」とあります。

私たちの学びの姿勢は、ちょうど山登りに似ています。麓にたたずむ時には、はるか彼方の山頂が、一歩一歩、歩みを進めるたびに眼の位置は高くなり、視界が開けてきます。ゴールへはすぐには到達しません。しかし、歩き続けることで、次第にゴールがはっきりと見えてきます。

ところで、私たちの目指すゴールには、2つのものがあります。1つは自分の人生の中で目標をもち、自分自身を高めていくための挑戦で、これは英語ではVentureと表現されます。

もう1つは、自分の生を越えたゴールです。子や孫へ更に次世代へ繋いでいきたい大きなゴール、英語ではVisionという言葉で表現されます。今いのちを与えられているものだけが、次世代の夢を見ることができます。その夢をどう描き、その目標に向かって自分は何ができるか、それをどう行動へと移していけるのか、また挑戦していくかというゴール、責任もあることに気づかなくてはなりません。

1つの山をのり越えたら、また次のより高い山に向かって歩んで行ってほしいと思います。その方向を目指して共に歩む友人を持つことができれば、さらにゴールへの道巾が広がります。そして自分が到達しえなかったゴールは、同じ方向に向かって行動をする次世代の人たちへと受け継がれていくものと思います。

LPC理事長 日野原重明

 

 

 

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