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しかし、痴呆の人の異常行動とか精神症状の多くは、突然生じた問題ではなく、1年、2年とさんざん苦労してきている。だからその問題は1週間や2週間で解決できることではなく、これから一緒に考えていきましょうときちんと伝えることが大切です。

このケースの問題は、訓練に一所懸命だった娘さんの取り組みに問題があったのですが、娘さんがそれに気がついたことで、異常行動が消えてしまった。ここがポイントです。この方は、決して意地悪でやっていたのではなく、これ以上母親の痴呆を進めたくないという思いだったのです。その考えがお母さんを追い詰めてしまった。そういうふうにとらえていく必要があります。

異常行動や家族の対応による問題が生じると、家族と患者さんとの関係を対立的にとらえがちですが、それはかえって家族を追いつめてしまいます。家族の真剣さが間違っているのなら、それを指摘することは必要ですが、その際に大切なのは一所懸命かかわっている家族を支えていくことです。この使い分けをいつも意識している必要があります。

 

 

 

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