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心筋梗塞発作の始まりを自覚症として正しく表現することも当人の命にかかわることですからきわめて大切です。

心筋梗塞発作のうち約3分の1は無痛のものといわれます。とくに高齢の患者や糖尿病患者には無痛のケースが多いのですが、本当に患者がその違和感を的確に表現することができれば、医師にはそれが心筋梗塞発作の発症症状であるかどうかが即座に診断できるのです。痛みがない場合でも冷や汗が出ていることを患者が訴えれば、私はそれだけで心筋梗塞を強く疑い、その時点で早期診断のためにはどのようなテストが適正かを決めることができます。

患者が病気になると、まず自覚症が先発します。しかし、その時点ではいろいろのテストにも反応しないことが多いのです。つまり、検査や血液反応には何も異常値が出てこなくても、脳には敏感なセンサーがあり、そのリセプターによって当人は病気の発生を早く予感することができます。それを早く主治医に伝えれば、病気はきわめて初期のうちに発見できるかもしれません。そのようにして信頼性のある証拠が患者からいち早く示されると、その証拠から医師は病気に正しい診断をつけることができるのです。

私は患者に血圧の自己測定を20年ほど前から勧めてきました。医師に血圧を測定されると、患者は無意識のうちに緊張するので、血圧は時には30mmHgも50mmHgも高くなることがあります。ですから、本当の血圧は家庭内で測定し、それを表にして医師のところへ持っていくと、そのデタはPOSの0(Object)となり、患者のSと0とから正確なA(Assessment)がつけられるのです。患者さんを教育して、Sや0、そしてその評価(Asscssment)が患者自身によって行われれば、それはレベルの高いPOSによる診察であって、そのアウトカムは信頼されるものとなります。

 

 

 

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