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それはまた他者とのかかわりの必要性を感じるようになるということでもあります。

しかし、他者とのかかわりの必要性を感じない人は、被害者意識をもつようになります。自分の抱えている問題が、自分の育った家族とか、もしくは学校や社会にその原因を転嫁していくのです。そうしますと、自分を過去の被害者の立場におき、他者を責めるようになります。通り魔事件や青少年犯罪などではこの被害者意識をもっているケースが多いのです。

最近は、児童虐待も問題になっていますが、身体的な虐待、言葉による虐待、あるいは性的な虐待などもカウンセリングの中で扱うことが多くなっています。しかし、正確な自己認識なしに扱うと、家族だけを責めるようになります。それで解決できるならそれでもよいのかもしれませんが、そのような対応からは癒しのかかわりの土台を築くことは困難です。ところが自己の限界を受容していますと、確かに家族は悪かったかもしれないけれども、いま抱えている問題は自分自身の問題であって、責任をもって解決していく必要があると思えるようになるのです。親にも限界があり、その結果そのようになったのであるというように、自己の限界ということがわかってくることによって、他者の限界も受け入れることができるようになります。もちろんカウンセリングでは、虐待があった場合には加害者と被害者が向き合う機会を設け、被害者の真の気持ちを伝えて和解する必要はあります。しかし、このことは、被害者意識をもつこととは違うのです。被害者意識の中で癒しのかかわりを築くのはほとんど不可能です。

 

 

 

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