日本財団 図書館


“私”という全体性の獲得

 

では、全体性とは何か。

個人でいえば先に見たように「からだ・あたま・こころ」を統合する全体性ということがいえます。いわゆる「全人」ということです。

身体的疾病であっても知性、霊性をないがしろにしてボディ修理工場のような治療をしても人は癒されないし、健康を取り戻せはしないということでもあります。

日本でもやっとインフォームド・コンセントということが受け入れられる態勢ができてきたようです。これは医者が患者に診断結果を示して病状をよく説明し、本人の理解と納得のもと治療方針を立て、了解を得ながら治療を進めていくことですが、このプロセスでは知的存在としての患者の尊厳が尊重されているわけです。一歩前進です。

日本でこれから真剣に模索されなければならないのは、患者の霊的、すなわちスピリチュアルな尊厳をどのように真剣に受けとめる態勢を整えていくか、ということではないでしょうか。それで初めて「私」としての全体が完結するのです。それは病院の専門外、と簡単に片付けてしまわないでください。病院の使命が「健康の回復」にあるならば、つまり人としての全体性の回復を支えることを目指すのであれば、避けて通れないことのはずです。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION