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第6章 篤志観測船の確保を推進するための提言

 

気候変動をはじめとする地球環境システムの変化に重要な役割を果たしている海洋の動態を解明するには、時間的、空間的に密な海洋の精密観測が不可欠である。

海洋は地球表面の約7割の面積を占めながら、人間が常に生活している領域ではないために、その気候変動に果たす役割の重要性は強調されても、観測網の整備は非常に遅れている。さらに、海洋内部の状態、地球環境に影響をおよぼす物質の分布やその変化は、リモートセンシング技術(時間的、空間的に密な海洋観測を行うには有効な観測方法)でも十分な観測ができていない。そのため、海洋観測は従来より観測船による直接観測によって行われてきた。しかしながら、海洋観測船による観測のみでは、地球環境の変化を解明するに足る時間的、空間的に密な観測データを得ることは困難である。

このような状況を改善するために、従来、海上気象観測(法律で義務付けられている海上気象通報)の分野で実績のある篤志観測船のシステム(一般商船などによる)を海洋観測の分野でも採用することが試みられた結果、海水温度の構造の観測(XBT;投棄式自記水深水温計)など、既に成果があがっている分野もある。

本事業の目的は、一般商船などの篤志観測船による温室効果ガス観測システムの開発であり、この当初の目的は達成した。また、より多くの篤志観測船が参加することで、観測の密度を上げることの重要性が、本観測の結果からも確認された。今後、温室効果ガス観測をさらに拡充するためには、篤志観測が容易に実施可能となるよう、設計段階から必要な船舶設備を備えること及び篤志観測船への参加が容易に可能となるような社会的、経済的システムの構築が必要である。

「一般商船による北太平洋での温室効果ガス観測システムの構築」事業の終了にあたり、本事業で為された「篤志観測船による観測システム構築」に加え、今後は「篤志観測船による観測システムを運用していくための総合的なシステムの検討」が必要であると考えられる。

 

 

 

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