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このように、季節や海域によって海洋は大気中の二酸化炭素を吸収、あるいは放出しており、西部北太平洋は東部北太平洋よりも、二酸化炭素をより吸収していることなどが見出された。

さらに、東経140〜155度の海域(観測の航路は一部亜寒帯域を通過しているので北緯40度を超えない範囲)について、水温と海水中の二酸化炭素濃度の関係を図5.3-2に示した。この図から、大気中と海水中の二酸化炭素濃度の差が水温17〜19℃を中心に最も大きくなり、海洋は大気中の二酸化炭素をよく吸収していることがわかる(図中の矢印部分)。また、この海域での表面海水の水温17〜19℃は、亜熱帯モード水ができるとされている温度である事が知られている。これらのことから亜熱帯モード水が形成される海域において、二酸化炭素が大気から海洋へよく吸収されている様子が見出された。

亜熱帯モード水:表層混合層で18℃前後のほぼ一様な水温によって占められる水塊で、海洋表面で形成され、季節的な冷却を受けて沈降する。この時、大気と海洋の二酸化炭素の交換(ここでは大気から海洋へ吸収される)の結果を伴って沈降すると考えられるが、亜熱帯モード水における炭素循環の詳細については、本報告書の範囲を超えるものであり、今後詳細な調査研究が望まれるところである。

 

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図5.3-2 水温と海水中の二酸化炭素濃度の関係

 

また、「ありげーたーりばてい」で観測した海域において、海洋全体が二酸化炭素の吸収域あるいは放出域であるかを検討するために、全9航海について大気中と海水中の二酸化炭素の濃度差(海水−大気)を経度1度毎に平均した。図5.3-3はその濃度差の平均値が、それぞれ最小値、最大値を示した航海である080E航、083E航および9航海全ての平均値のグラフを示す。

 

 

 

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