日本財団 図書館


(3) 基本構想作成に当たっての留意事項

市町村は、効果的に移動円滑化を推進するため、以下の事項に留意して基本構想を作成する必要がある。

1] 目標の明確化

各種事業の実施に当たっては、当該重点整備地区における移動円滑化について、市町村をはじめ、公共交通事業者等、道路管理者、都道府県公安委員会等の関係者の施策を総合的に講ずる必要があることから、各者間で共通認識が醸成されることが重要である。したがって、基本構想には、地域の実情に応じ、できる限り具体的かつ明確な目標を設定する。

2] 都市計画との調和

基本構想の作成に当たっては、都市計画及び都市計画法(昭和四十三年法律第百号)第十八条の二第一項に規定する市町村の都市計画に関する基本的な方針(以下「市町村マスタープラン」という。)との調和が保たれている必要がある。

3] 地方公共団体の基本構想との整合性

市町村は、その事務を処理するに当たっては、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)に基づく基本構想に即して行う必要があるため、基本構想もこの基本構想に即していなければならない。

4] 地方公共団体の移動円滑化に関する条例、計画、構想等との調和

地方公共団体において、移動円滑化に関する条例、計画、構想等を有している場合は、基本構想はこれらとの調和が保たれている必要がある。

5] 各種事業の連携と集中実施

移動円滑化に係る各種の事業が相互に連携して相乗効果を生み、連続的な移動経路の確保が行われるように、公共交通事業者等、道路管理者、都道府県公安委員会等の関係者間で必要に応じて十分な調整を図って整合性を確保するとともに、事業の集中的かつ効果的な実施を確保する。

また、複数の事業者間や鉄道とバス等複数の交通機関間を乗り継ぐ際の旅客施設内の移動円滑化にも十分配慮する。

さらに、公共交通特定事業に係る費用の負担については、当該事業の性格を踏まえた適切な役割分担に応じた関係者間の負担の在り方について十分な調整を図って関係者間の共通認識を確保する。

6] 高齢者、身体障害者等の意見の反映

公共交通機関を利用する当事者である高齢者、身体障害者等をはじめ関係者の参画により、関係者の意見が基本構想に十分に反映されるよう努める。

2 重点整備地区の位置及び区域に関する基本的な事項

(1) 重点整備地区の要件

法では、市町村は、特定旅客施設を中心とする地区であって法第二条第七項各号に掲げる要件に該当するものを、移動円滑化に係る事業を重点的かつ一体的に推進すべき重点整備地区として設定することができることとされている。

重点整備地区の中心となる特定旅客施設については、高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律施行令(平成十二年政令第四百四十三号)第一条で定める要件に該当するものの中から、市町村が旅客の構成や移動の状況等地域の実情を勘案して定めることが必要である。

また、重点整備地区の区域を定めるに当たっては、以下の法第二条第七項の要件に照らし、市町村がそれぞれの地域の実情に応じて行うことが必要である。

1] 「特定旅客施設との間の移動が通常徒歩で行われ、かつ、高齢者、身体障害者等が日常生活又は社会生活において利用すると認められる官公庁施設、福祉施設その他の施設の所在地を含む地区であること。」(法第二条第七項第一号)

公共交通機関の利用に当たっては、当該公共交通機関と出発地及び目的地との間において徒歩による移動が必要になるという観点から、重点整備地区は、特定旅客施設からの徒歩圏内にあって相当数の高齢者、身体障害者等が利用する施設の所在地をその区域内に含むことが必要である。このような施設は、官公庁施設、福祉施設、病院、文化施設、商業施設等多岐にわたる施設が想定されるが、具体的にどの施設を含めるかは施設の利用の状況等地域の実情を勘案して選定することが必要である。

2] 「特定旅客施設、当該特定旅客施設と前号の施設との間の経路(以下「特定経路」という。)を構成する道路、駅前広場、通路その他の施設(以下「一般交通用施設」という。)及び当該特定旅客施設又は一般交通用施設と一体として利用される駐車場、公園その他の公共の用に供する施設(以下「公共用施設」という。)について移動円滑化のための事業が実施されることが特に必要であると認められる地区であること。」(法第二条第七項第二号)重点整備地区は、重点的かつ一体的に移動円滑化のための事業を実施する必要がある地区であることが必要である。

このための判断基準として、特定旅客施設、一般交通用施設及び公共用施設について、高齢者、身体障害者等の利用の状況及びこれらの施設の移動円滑化に係る整備状況等から総合的に判断して、移動円滑化のための事業の実施が特に必要であると認められることが必要である。

3] 「当該地区において移動円滑化のための事業を重点的かつ一体的に実施することが、総合的な都市機能の増進を図る上で有効かつ適切であると認められる地区であること。」(法第二条第七項第三号)高齢者、身体障害者等に交流と社会参加の機会を提供する機能、消費生活の場を提供する機能、勤労の場を提供する機能など都市が有する様々な機能の増進を図る上で、移動円滑化のための事業が重点的に、かつ、各事業の整合性を確保して実施されることについて、有効かつ適切であると認められることが必要である。

(2) 留意事項

市町村は、重点整備地区を定めるに当たっては、以下の事項に留意するものとする。

1] 基本的考え方

重点整備地区の具体的な設定については、それぞれの市町村ごとに多様であると考えられるが、高齢者、身体障害者等の徒歩又は車いすによる移動の状況、土地利用や諸機能の集積の実態及び将来の方向性、想定される事業の実施範囲、実現可能性等の観点から、一体性があり、集中的・効果的な取組が可能となるような地区とすることが必要である。

2] 重点整備地区の数

市町村内に特定旅客施設が複数ある場合、複数の重点整備地区を設定することもあり得るが、当該特定旅客施設間の距離、移動の状況等地域の実情から適当と判断される場合には、一つの重点整備地区として設定することも可能である。

3] 重点整備地区の範囲

重点整備地区は、特定旅客施設からの徒歩圏内てあることを要件としており、特定旅客施設からおおむね五百メートルから一キロメートル以内の範囲であると想定されるが、具体的な区域の設定は、高齢者、身体障害者等の特定旅客施設からの移動の状況、施設の分布状況等市町村が地域の実情に応じて判断することが必要である。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION