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告示(移動円滑化の促進に関する基本方針)

 

移動円滑化の促進に関する基本方針

平成十二年十一月十五日

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我が国においては、急速な高齢化の進展、ノーマライゼーションの理念の浸透などから、高齢者、身体障害者等の自立した日常生活及び社会生活の確保の重要性が増大してきており、その前提の一つとして、高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の利便性及び安全性の向上(以下「移動円滑化」という。)が急務となっている。

本方針は、このような移動円滑化の実現に向け、高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律(以下「法」という。)に基づき、国、地方公共団体、公共交通事業者等、道路管理者、都道府県公安委員会等の関係者が互いに連携しつつ移動円滑化を総合的かつ計画的に推進していくための基本的な方針として定めるものである。

 

一 移動円滑化の意義及び目標に関する事項

1 移動円滑化の意義

我が国においては、諸外国に例を見ないほど急速に高齢化が進展しており、本格的な高齢社会への対応が急務となっている。来るべき高齢社会においては、健全で活力ある社会形成のためには、高齢者の自立と社会参加が不可欠となる。

また、近年、障害者が障害のない者と同等に生活し活動する社会を目指す、ノーマライゼーションの理念の社会への浸透が進み、障害者が障害のない者とともに活動し、サービスを受けることができるよう配慮することが強く求められるようになってきている。

このように我が国においては、高齢者、身体障害者等が自立した日常生活及び社会生活を営むことができる社会を構築する重要性が増大してきており、そのための環境の整備を一刻も早く推進していくことが求められている。公共交通機関を利用した移動は、高齢者、身体障害者等が社会参加をするための重要な手段であることから、移動円滑化を促進することは、このような社会の実現のために大きな意義を持つものである。

移動円滑化の効果としては、高齢者、身体障害者等の社会参加が促進され、社会的・経済的に活力ある社会が維持されるほか、高齢者、身体障害者を含めすべての利用者に利用しやすい施設・設備の整備が実現することが挙げられる。

なお、移動円滑化を進めるに当たっては、高齢者、身体障害者等の意見を十分に聴き、それを反映させることが重要である。

2 移動円滑化の目標

移動円滑化を実現するためには、公共交通機関の旅客施設及び車両等の構造及び設備を改善するとともに、旅客施設の周辺において連続した移動経路を形成する歩道、駅前広場、通路等を整備することが重要である。

したがって、法では、公共交通事業者等が旅客施設を新設するとき若しくは一定の大規模な改良を行うとき又は車両等を新たに事業の用に供しようとするときは、当該旅客施設及び車両等の移動円滑化基準への適合が義務付けられているほか、市町村が重点整備地区における移動円滑化に係る公共交通特定事業、道路特定事業、交通安全特定事業その他の事業の重点的かつ一体的な推進に関して作成する基本構想に即して事業を実施することとしている。

移動円滑化の促進に当たっては、国、地方公共団体、公共交通事業者等、道路管理者、都道府県公安委員会等の関係者が必要に応じて緊密に連携しながら、法に基づく枠組みの活用等により、以下に掲げる事項を達成することを目標とする。

(1) 旅客施設

1] 鉄道駅及び軌道停留場

一日当たりの平均的な利用者数が五千人以上である鉄道駅及び軌道停留場に関し、平成二十二年までに、エレベーター又はエスカレーターを高低差五メートル以上の鉄道駅及び軌道停留場に設置することをはじめとした段差の解消、視覚障害者誘導用ブロックの整備、便所がある場合には身体障害者対応型便所の設置等の移動円滑化を原則としてすべての鉄道駅及び軌道停留場について実施する。また、これ以外の鉄道駅及び軌道停留場についても、地域の実情にかんがみ、利用者数のみならず、高齢者、身体障害者等の利用の実態等を踏まえて移動円滑化を可能な限り実施する。

2] バスターミナル

一日当たりの平均的な利用者数が五千人以上であるバスターミナルに関し、平成二十二年までに、段差の解消、視覚障害者誘導用ブロックの整備、便所がある場合には身体障害者対応型便所の設置等の移動円滑化を原則としてすべてのバスターミナルについて実施する。また、これ以外のバスターミナルについても、地域の実情にかんがみ、利用者数のみならず、高齢者、身体障害者等の利用の実態等を踏まえて移動円滑化を可能な限り実施する。

3] 旅客船ターミナル

一日当たりの平均的な利用者数が五千人以上である旅客船ターミナルに関し、平成二十二年までに、段差の解消、視覚障害者誘導用ブロックの整備、便所がある場合には身体障害者対応型便所の設置等の移動円滑化を原則としてすべての旅客船ターミナルについて実施する。また、これ以外の旅客船ターミナルについても、地域の実情にかんがみ、利用者数のみならず、高齢者、身体障害者等の利用の実態等を踏まえて移動円滑化を可能な限り実施する。

4] 航空旅客ターミナル施設

一日当たりの平均的な利用者数が五千人以上である航空旅客ターミナル施設に関し、平成二十二年までに、段差の解消、視覚障害者誘導用ブロックの整備、便所がある場合には身体障害者対応型便所の設置等の移動円滑化を原則としてすべての航空旅客ターミナル施設について実施する。また、これ以外の航空旅客ターミナル施設についても、地域の実情にかんがみ、利用者数のみならず、高齢者、身体障害者等の利用の実態等を踏まえて移動円滑化を可能な限り実施する。

(2) 車両等

1] 鉄道車両及び軌道車両

平成二十二年までに、総車両数約五万一千両のうち約三十パーセントに当たる約一万五千両を移動円滑化された車両とする。

2] バス車両

バス車両(現時点においては、総車両数約六万台)に関し、原則として、十年から十五年で低床化された車両に代替する。また、ノンステップバスについては、向こう三年間から五年間を目途に標準化を図ること等の措置を講ずることにより、新規導入車両に占める割合を逐次高めることとし、これによって平成二十二年までに、バス総車両数の二十パーセントから二十五パーセントをノンステップバスとする。

3] 船舶

平成二十二年までに、総隻数約千百隻のうち約五十パーセントに当たる約五百五十隻を移動円滑化された船舶とする。

 

 

 

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