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5) 患者の移動に関する身体状況

スタッフが、コンピューター端末を使って、身体状況、場所、予約時間等を入力し最適な車両と介助器具を選択し計画を作成する。

LASが扱う患者の多くは当然ながら病院からの帰りの移動手段も必要としている。診察や治療が終わると、患者は病院内にあるLASの事務所に行き、帰りの支度が整ったことを告げる。そこで再び、コンピューターに患者が帰りの支度ができて待機している状況を入力し配車される。ただし、実際には、患者の利便性を考えて、わざわざ事務所に出向かなくても、病院の受付係が患者の診察が終わる頃を見計らって、アンビュランスの予約を事務所に連絡している。こうした連携は重要であり、柔軟なサービスの姿勢は見習うべき部分が多い。アンビュランスのドライバーは病院の待合室に、診察の終わった患者を迎えにきて帰路につく(図4)。

 

3] 輸送実績

この病院のステーションの輸送実績は、最大で1日250名、平均で150名を送迎する(片道1トリップとして最大500トリップ)。病院との契約内容は患者120名までだが、契約輸送人数の10%増し(132名)までは、委託金額内で対応している。それ以上は追加費用を徴収する。追加費用は往復で1人あたり26〜30ポンドである。ちなみに、ロンドン全体の輸送実績はおよそ3,800人/日である。

サービスの対象範囲は基本的に都心部に限られているが、大学病院なので他地域からの患者もおり、契約外サービスとして対応している。

また、通常のアンビュランス・サービスの他に10名のボランティアによるアンビュランス・カー・サービス(ACS)がある。ボランティアは有償で実費程度の金額で送迎を行う。自車で対応し、基本的に歩行可能な患者を対象にしている。保険は自前の自動車保険である。退職者が多いため、一定以上の収入を得ると課税されるため、週に80ポンドを超えない範囲で参加している(課税は年間収入£3,800超、年金の給付額は週£63)。こうしたボランティアによる病院送迎は過疎の地域ではいっそう顕著で、イギリス西部の地域(コーンウォルなど)ではアンビュランス・サービスの60%がボランティアによって賄われている実態もある。

 

4] 患者へのケア

病院まで送られた患者は、病棟の受け付け事務職員に伝達されて搬送業務は終了する。往路は予約により配車されるが、復路は診察時間がまちまちなため、前述のように病院の受付係から病院内のLASステーションに診察終了の連絡が入り、患者は待合室でドライバーが迎えに来るのを待つ方法をとっている。これにより車両が診察中待機しなくて済む(図4)。

 

 

 

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