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エコモ最前線レポート

ひと・インタビュー

 

情報化社会は、障害者や高齢者がつくる

株式会社ユーディット(情報ユニバーサル研究所)

代表取締役 関根千佳さん

 

「障害者は、高齢化社会の先生です」

「IT革命」という言葉に代表されるように、今や情報通信分野での進展が早いスピードで進んでいます。「誰でも、いつでも、どこでも、簡単に」ほしい情報を手に入れることができ、こちらからも発信できる。そんな時代が、すぐそこまで来ているのです。

「これからは、障害をもつ人や高齢者こそが、この大きく進展する情報化社会のメリットを、一番享受できるはずです」と語るのは、株式会社ユーディットの関根千佳さんです。パソコンを中心とした情報機器類も、障害者が使いやすいよう工夫された製品が数多く出回るようになりました。関根さんはかつて日本アイ・ビー・エムで、障害者や高齢者が使いやすいバリアフリー製品の開発に関わり、企業の社会貢献についても発言してきました。

「自分が歳をとったときに、きちんと使える情報通信機器があればいいなと思ったのです。高齢者や障害者が使いやすい製品やサービスは、基本的には若者や健常者にとっても、きっと使いやすいものなのです」と、関根さん。この考え方が「ユーバーサルデザイン」という発想に結びついていきます。

企業はもはや障害者ユーザーや高齢者ユーザーの要求を無視できなくなってきています。より使いやすく、わかりやすいパソコンやソフトウェアをつくり、支援技術と簡単に連動できるような、気を配った「ものづくり・ソフトづくり」ができる企業が、来世紀に生き残れる企業だ、といとうこになります。さらに関根さんは、健常者がまずしなければならないことは、積極的に社会で働く障害者や高齢者と、もっと触れ合う機会を増やすことだと言います。また行政に対しては、「豪華な展示施設より、実際に適用を助けてくれるリハ・エンジニアが常駐し、試用や貸し出しをしてくれる技術センターがほしい」と、発言しています。実際に、関根さんが関わるパソコン支援のボランティア団体「ドリームナビゲータヨコハマ」には、障害者や高齢者から、このような生の意見や要求が寄せられています。

われわれはいつかは年をとり、どこかが悪くなります。つまり障害者になるということです。「新しい道を切り開いている障害者たちは、私たちの羅針盤」と話す関根さん。われわれは、この羅針盤となる人たちと積極的に関わり、新しい情報化社会の形を築いていかなければならないのかも知れません。

 

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プロフィール

関根千佳(せきねちか)

日本アイ・ビー・エム勤務の後、1998年に情報のユニバーサルデザインを普及させようと、株式会社ユーディットを設立、現在代表取締役。障害者や高齢者と情報通信のあり方を追求している。著書に「パソコンボランティア(共著)」(日本評論社)「バリアフリー生活カタログ」(小学館)「バリアフリーの商品開発2」(日本経済新聞社)などがある。

E-mail:csekine@udit-jp.com URL:http://www.udit-jp.com

 

 

 

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