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政府は造船政策を立案するに当って、この様な国際市場の動向に配慮しなければならない。

その後で徳留氏は、船舶の安全性と海洋環境保護の分野において、国際海事機関(IMO)等で進められている国際的対応について述べた。シングル・ハル・タンカーのダブル・ハル・タンカーへの移行を早めることを求めた提案が第45回海洋環境保護委員会(MEPC)で討議され、来年に予定された第46回MEPCで採択される。この提案が実施されれば新造船の発注が増加し、先に触れた需給バランスを改善する効果がある程度期待できるが、その後は需給バランスを拡大する効果があることを徳留氏は付言した。

さらに、海中生物の船底への付着を防ぐことを主な目的としたTBT塗料の使用について説明した。この塗料は人体に有害であり、それによる汚染が蔓延している事実は確認済みである。IMOは、2001年10月にこの塗料の使用を禁止する条約を採択するための会議を開催する。

徳留氏は、船舶に関するデータの透明性を高めることを意図したデータベースシステムEQUASISについて説明した。これは欧州委員会とフランスが開発し、日本、アメリカ、シンガポール等世界各国が参加し今年初めから稼動している。この件に関する情報はインターネットで検索できる。続いて、日本における造船・舶用工業に関する政府の政策、業界の現状について、宮村氏に説明させた。

表I-1と表I-2に基づいて、宮村氏は、ここ3年間数値が殆ど一定していることを指摘した。しかし新造船の受注量は対前年比6.6%の減少があったものの、過去3年間ではGTべースでほぼ一定している(表I-3参照)。手持工事量はGTベースで若干の減少を示し、竣工量は平均10,000,000GTとなっている(それぞれ表I-4およびI-5参照)。また新規受注量、手持工事量、竣工量は相互に密接に関連し、影響されるものであることを宮村氏は指摘した。

徳留氏と同じく、宮村氏も世界の新造船能力の拡大傾向を指摘し、これがかつてない熾烈な競争につながるという懸念を示した。日本では、国際競争に対処し、企業基盤を強化するには経営資源の統合が不可欠であると認識されていて、その結果、大幅な産業構造改革が必要だと考えられている。内航海運のための新造船需要の低落に苦しむ中小造船事業者も、構造改善、新規需要の創出など、回復のための抜本的な対策に取り組んでいる。

国際協力の振興について、造船市場における公正かつ自由な競争の促進を目的とした協定の策定に、日本が積極的なイニシアティブを取ったことを同氏は説明した。地球環境問題への取組みにおいても、日本が積極的な役割を果たしていることを同氏は付言した。また、造船・海運部門における発展途上国との経済・技術協力をさらに進めるため、日本が積極的に経済・技術援助を進める意向であることを明らかにした。

続いて日本における船舶解撤事業の衰退について述べた。この衰退は、海運市場の世界的改善により、80年代後半に顕著になった。主要な解撤国であった台湾と韓国が撤退したため、東南アジア諸国に進出の機会が開けている。

 

 

 

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