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第4章 溶接による熱影響

 

4.1 溶接冶金

4.1.1 鉄一炭素平衡状態図

溶接用鋼材において、C炭素、S硫黄等の元素が、溶接に対してどのように影響するかを述べたが、この節においては、溶接による熱によって、溶着金属や、母材の温度が変化し、その結果、どのような性質の変化かあるかを述べる。

 

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第4.1図 鉄一炭素平衡状態図

 

鋼は、温度と冷却速度によって著しくその性質が異なる。これを理解するために、鉄一炭素平衡状態図第4.1図を説明しよう。

普通の溶接用軟鋼は、炭素量0.2%以下であるが、この状態図を見ると、723℃をA1変態点といい、723℃を超える範囲から、鋼の組成はα(アルファ)鉄がγ(ガンマ)鉄にかわりはじめる。α鉄は、その結晶格子が体心立方格子という形であってγ鉄は面心立方格子という形である。723℃を超えたところからA3の線GSと交わるところまでは、α鉄とγ鉄が混在しているところ、即ち、α鉄からγ鉄にうつりかわりつつあるところである。

A3線を超えると、すべてがγ鉄となり、1,500℃前後で、鋼は溶けはじめるのである。

このγ鉄の領域にまで、加熱した鋼に対して冷却することにより、いろいろの組成の鋼か得られる。その変化は、冷却の速度による。水冷や油冷のように急冷すると、極めて硬い組織が得られるが、冷却速度をおそくすればする程、その硬度は下ってくる。

 

4.1.2 溶接部の温度と性質

第4.2図は、突き合わせ溶接を行って行くときに、A-A断面における温度がどのように変化して行くかを示したものである。溶接のアークがA-A断面の丁度上にあるとき、そのところの温度は急激に上昇し、1]の形の温度分布となる。次に、アークが2]のところに移動したときは、分布図の2]の形であり、ビード部の温度は幾分下るが、その周囲に、アークの高温が伝わり、すぐ近傍ではA1変態点の723℃以上の温度となる。順次アークが3]、4]と遠ざかるにつれ、中央部の温度は両側に伝わり、それぞれの場所である最高温度まで上昇した後、温度は下降する。

 

 

 

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