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これは単純な原因から起きたものでなく、多くの悪い条件が重り合い、また連鎖反応的に作用して原因を作り出す。この一つ一つの悪条件を要因といっている。

(a) 生活の背景(第1のコマ)

生育環境がよくない、家庭生活が幸福でない、友人関係が悪い、恋愛関係で悩んでいる、娯楽にふけりすぎる、経済的に苦しい、上司の監督が適切でない、仕事が向かない、仕事が多すぎる、作業方法が基準化されていない、職場の規律が悪い、などこれらは次の個人的欠陥を生み出す原因となる。

(b) 個人的欠陥(第2のコマ)

乱暴、不注意、無精、幼稚、軽薄、怠慢、やけ、興奮、誤解、はんもん、心配、めいてい、疲労、睡眠不足、身体異常、知識や技能の不足、体力の不足、規則や指示の軽視など。すなわち、個人の精神的、肉体的状態が悪くて次の不安全な行動や状態を起こしやすい。

(c) 不安全行動と不安全状態(第3のコマ)

位置が悪い、姿勢が悪い、速度を出しすぎる、スイッチを入れ間違える、運転を誤る、ふざける、道具を投げる、正規でない道を通る、代用のはしごを使う、安全装置や保護具を使わない、知らない機械を動かす、規則を無視した行動をとる、暗い、暑い、苦しい、整理整頓が悪い、など、またこれらは次のように表現することができる。すべりそう、倒れそう、落ちそう、ぶつかりそう、ひっかかりそう、はさまれそう、かまれそう、巻き込まれそう、感電しそう、切れそう、抜けそう、はねかえりそう、目に入りそう、火がつきそう、など。

(d) 事故(第4のコマ)

ころぶ、ぶつかる、うたれる、落ちる、感電する、高熱に触れる、異物が目に入る、危険物や毒物に触れる、爆発する、火事になる、有毒ガスを吸う、など。事故を一応定義づけると、順当になされるべき行動や、順当であるべき状態を妨げるような変った事実が災害を起こす可能性をもって現われた場合これを事故という。

(e) 災害(第5のコマ)

不休傷害、休業傷害、身体機能傷害、死去、設備、機械、製品、材料、その他の生産上の損失すなわち人的損害と物的損害の両方を意味する。

以上の五つのコマの説明であるが、それぞれ単独で災害を起こすことはない、災害を起こしたということは、それ以前に事故があったという証拠である。事故はひとりで起るものではなく、起こされるものである。つまりかならず原因があり、人の行動や物的状態が不安全なことである。さらに不安全な行動や状態を招く原因は、だれかの個人的欠陥・過失であり、偶然に現われるものでもなく、必ず原因がひそんでいるものである。

 

 

 

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