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特に小さい職場では給与、厚生よりも、この人事関係が一番大切である。工場の人事が実力を対象とせず縁者関係、義理人情、その他の情実によって左右されると有能の士は安心して働けなくなる。

 

1.3.2 安全・衛生管理

(1) 安全管理の目的

安全の基本は人道的な立場から出発している。思わぬ災害事故により、従業員を傷つけ、本人および家族を不幸におとし入れることがあってはならない。造船業は作業の特殊性から災害が発生しやすい。人命事故のような場合には企業としては人材を失うことになり場合によっては企業の存立を危うくすることにもなる。「安全第一」という言葉はだれしも口にし、工場の職場には「安全第一」の標語が見易い場所に掲げられているが、安全管理の真の意義がこの言葉のなかにあることを常に心得ておくことが大切である。

1906年頃、米国の製鉄会社(U.Sスチール)は工場の災害の実情をみて、人道的な立場から、生産を犠牲にしても先づ災害防止に専念する計画を実行したところ、災害は激減したが、生産は減らず、むしろ上昇するという結果がでた。しかもこの現象は偶然でなく次の年もその次の年も同様な成績をあげたという。この時のモットーが「安全第一」「品質第二」「生産第三」であった。このことが、作業員の犠牲をなくすと同時に生産を上げることの事証となり、その後世界の安全運動にまで広まっていった。

安全運動は「安全第一」の言葉から始まったが現在では、安全と生産とは一体であり、分離しては考えられないということが常識となっている。すなわち、従業員の幸福を守るため絶対に必要な工場の安全は、会社にも大きな利益ももたらすからである。安全は災害の防止ばかりでなく、従業員が安心して生産に専念でき、品質や生産の向上をもたらすことになり、人道上はもちろんのこと、経営面からもその重要性を認識しなければならない。

(2) 災害はどうして起こるか。

災害発生の5要素(五つのコマ)

 

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災害発生原因には要因があり、簡単には説明できないが大きく分類して、次の五つに分け(五つのコマ)て、米国の安全技師ハイリッヒは説明している。事故の前提となるのは、不安全行動と不安全状態である。

 

 

 

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