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1.2 設備管理

1.2.1 一般

船の造修の設備といえば、土地、建物、各種の機械等が最も重要なものとなっている。木造船の時代には、海岸の砂浜と引揚卸に使う盤木、コロ、カグラサンと道具は鋸、ノミ、カンナ、チョウナ、曲り尺、墨ツボ、などの簡単なもので立派な船を建造していた。

船舶の需用の増大とともに、船の諸性能の面での要求から主要材料が、鋼、軽金属、FRP、と船の使用目的に合った材料が使われるようになった。

また一方、船は大型化が要求されてきた。例えば内航貨物船では木造機帆船(100〜150G/T)から鋼船(199G/T)〜(499G/T)と変ったように順次大型のものが建造されてきた。これを受注し、生産するためには、建造船に見合った、最小限の設備が必要となってきた。

小型造船業法で定められている特定設備はこれらの設備について、小型造船業の健全な発展のための近代化と技術能力の向上と適性な水準の確保のために定められたものである。

このように船の大きさ、主要材料により、生産のための諸設備は企業の生産規模に応じたものが必要となってきた。しかしながら、小型造船所における現有設備は順次近代化増強を行っているが一般には依然として老朽化のものが目立ち、このため生産性も低く、品質性能面でも十分とはいえないものがある。

多くの造船所はこれらの対策として合理化、近代化のための設備改善に努力した結果、以前に比べて格段の進歩が見られるようになってきた。

設備には多額の投資が必要となる。投資した資金は固定費となり(財務管理参照)、借入金利息や減価償却としての企業の重荷となる。そのためには期待される生産量が確保できるかが問題となる。最近の造船界の環境は時の好況に比して、停滞ぎみとなり受注状況の見透しから設備の改善の意欲が低下しているのが現状である。

しかし、企業体質の強化、発展の基礎固めには必要なことであり、適確な採算性、周到な計画性のうえに設備改善には努力しなければならない。そのため、設備管理は、造船所の設備全般にわたり、生産能力のアンバランスが生じないよう注意が必要である。

生産工程は常に一本のパイプのなかの水の流れのように均一とすることが大切である。造船の生産工程には工事節点が特に多い。これは工程管理を行うことである程度は消化できるが、設備のために生ずる流れの欠陥は、工事期間に影響が生じ、次の流れを止めることにもなりかねない。

また、工事手順のみだれができ、工程管理まで影響する。設備改善には、まず現在の設備で何処が欠陥か、何処をどの程度にすれば生産に直結するかを検討して計画を立てなければならない。「あれば便利だ」的な考え方は危険である。

 

 

 

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