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児童演劇

No,481/2000.12.15

 

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日本児童演劇協会

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編集者 椎崎篤

発行者 内木文英

 

「『盲・聾・養護学校』児童青少年演劇巡回公演」※日本財団特別協賛

聾学校の児童生徒にも生きる力を!

―劇団「角笛」に同行して

椎崎篤

 

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開演を待つ子どもたち

 

期待をこめて

 

今年で四十年を迎えた芸術文化振興基金助成による当協会および開催地教育委員会主催の「児童演劇地方巡回公演」が、全国各地で行われているが、更に日本財団特別協賛による「児童演劇全国離島巡回公演」が五年目を迎え、また、同財団による「『盲・聾・養護学校』児童青少年演劇巡回公演」も四年目を迎えた。

その「盲・聾・養護学校」公演を今年は四劇団が担当する中で、劇団「角笛」が聾学校で公演するというので、その様子をじっくり見せてもらおうと、事務局の二見さんとともに劇団に同行することにした。

耳の不自由な子ども達のために劇団がどんな対策手法をとり、子ども達がその上演をどのように受け止めるのか、強い関心と期待をもって十一月十三日早朝、練馬区の劇団本部へ向かった。

七時半、既に万端準備が整い、顔合わせのミーティングの後、マイクロバス、大きなトラック、そして私と二見さんは劇団代表の白石武士氏の車に分乗して出発。一路前橋市を目指して走る。

 

大変な舞台作り

 

九時十分、群馬県立聾学校に到着、広々とした敷地に幼稚部から小・中・高等部まで約百二十名が学んでおり、それに教職員七十名、保護者三十五名が今日の観客だ。

赤城颪が少し冷たいが、早速トラックから荷物を体育館に降ろして舞台の設営に取り掛かる。十五名の劇団員がそれぞれの役割をもって、大きなスクリーンから両脇の小スクリーン、様々な種類の照明機材や音響機器、大小のセットや人形など、着々と実に手際よく舞台設備が構築されてゆく。特に若い女性の団員にとって、これは大変な重労働だ。

体育館のフロアー、ステージの前三分の一ほどにスクリーン、後の三分の二が客席となる。ステージの上に二台の脚立、そこから字幕スーパーが交互に投影される仕組みだ。狂いのないように機器のテストを繰り返して確認する。

 

いよいよ上演

 

昼食休憩もそこそこに、午後一時半、先生に誘導されて子ども達が入場してくる。みんな元気な笑顔で、いつもの体育館と違った大きなスクリーンに目を見張り、期待に目を輝かせている。

先ず劇団員の中野さんが手話で挨拶。彼女はこの聾学校公演のために、数ヶ月もかけて手話の勉強をしてきたという。

演目の最初は『花さき山』(齋藤隆介原作・山上路夫脚色)で、村の少女あやが山で出会った山姥からたくさんの花や大きな山が生まれた話を聞く。良いことをすれば咲くという花々の美しさ、火事と戦いの大波を防いだ大男の活躍の迫力など、影絵ならではの表現で楽しませてくれた。特に子ども達の視線の動きを考え、字幕スーパーを画面の上面に重ねて二台のスライドで交互に投影し、文字数もなるべく簡潔に、漢字も最小限に収めるなど、見ていてよく納得できた。

続いて楽しい手影絵と歌。聾学校の児童達だから、さすがに歌声が盛り上がるというわけにはいかないが、その楽しさを身体いっぱいに受け止め楽しんだようだった。

ここで十分間の休憩。そして次の演目『ないた赤おに』(浜田広介原作・山上路夫脚色)子ども達もよく知っている話だが、生き生きした画面にすっかり引き込まれ、感動を受けた様子だった。

 

 

 

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