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9-4 試験の考察及び成果

試験は、海上においてビューフォート6及び有義波高3mの海象時に実施することを考慮し、本試験の危険性、且つ困難性から、本システムの予備試験を海上保安庁横浜防災基地、東洋ゴム工業福島工場の試験水槽で実施する等、実海域試験に向けて万全な対策を立てて望んだものであるが、試験の結果は、両機種シューターの投下展張、又プラットフォームへの試験員の降下は概ね良好であったが、これに続き、作業の機敏性が要求される救命いかだの投下展張、プラットフォームへの引き寄せ作業が次のような情況を呈した。

(1) 確実な展張、浮遊を期待し、車両甲板上で膨張、投下させたいかだは、タグボートによりプラットフォームへ容易に引き寄せられるはずだったが、風浪のため、いかだは予想以上に遠方に流される等引き寄せ作業に多くの時間を費やした。

(2) 本船位置保持用の2隻のタグボートは自船の安定保持に精一杯で本船の維持、姿勢の制御は出来なかった。結果的に本船は航路筋に流され、自航により試験水域に移動せざるを得なかった。その過程で降下路がねじれるという現象が起きた。

試験の成果としては

(1) 既存の「海上退船システム」は、基本的に風及び波の影響を受けやすいが、荒天時にも投下・展張ができることが確認された。

(2) 特殊は船体形状といかだの取り合いで、極めて危険な状態が生じることが分かり、本船サイドの構造をも検討する必要があることが分かった。

(3) 平穏時の海域では、問題なくても、荒天時になると風による降下路の吹き流れ、支持策の緊・緩、プラットフォームの位置の保持等ソフト面も含めた改善等が必要であることが分かった。

(4) 海上における現在のプラットフォームの状況からみて、いかだの係留、乗客の誘導、いかだの離脱等の作業が、実施不可能ではないと思われるが、平穏な海域に較べ、荒天域ではさらなる課題の対応が必要であることが分かった。具体的には、荒天時における安全、容易な退船のためには、海上で要求される作業を最小限にする退船システムの必要性が痛感され、例えば、退船システムの設置場所を極力低い舷とし、降下路を出来るだけ短くすることや、降下路が直接救命いかだに接続され、船上から一体型システムを投下するだけで、降下、乗り込み可能なシステムなどの開発が想定される。

 

 

 

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