1. 事業目的
1994年4月バルト海でのRORO旅客船エストニア号の事故を契機として、IMOにおいて、関係の救命設備の見直しがなされ、1996年6月RORO旅客船にはシューターといかだが一体となった「海上退船システム」の積み付けが義務づけられ、併せてこれに関する荒天時性能確認が義務づけられることとなり、その後、IMO決議で荒天時性能試験に関して具体的な試験方法が明記され、「有義波高3m」以上の海象条件等が追加され、1999年7月1日以降に建造されるRORO旅客船に搭載されるものから適用されることとなった。
我が国のメーカーが製造する「退船システム」についてもIMO基準に適合する荒天時性能確認試験の実施が急務となったが、その実施に際して、同システムのハード面での性能確認の外、船員等による操作手順の確立等ソフト面での対応、試験実施に当たっての安全の確保等種々の問題が山積しており、具体的な試験方法の作成に長時間を要したが、今般ようやく実現に向けて環境が整ってきた。
本調査研究では、IMO勧告に定められている「退船システム」の荒天時性能を実船による実験を通して確認し、旅客の安全な退船を可能にするため、船員等に対するシステムの的確な操作方法の周知啓蒙を行うためのデータ・画像をも入手し、さらに得られたデータから今後の「退船システム」の性能向上のための基礎資料を入手し、安全な「退船システム」の確立のための総合的知見を得ることとした。
2. 事業計画
(1) 事業計画の内容
我が国メーカーが製造した2タイプ(スパイラル式、ジグザグ式)の「退船システム」について、IMO基準に基づく実船による荒天時性能確認等試験を実施し、これまで数値解析でしか確かめられなかった性能を実データより確認するとともに、当該システムの操作にあたる船員に対する周知啓蒙のためのデータ及び画像、さらに「退船システム」の今後の性能向上のための基礎資料を入手する。
なお、試験は過酷な条件下で行われるため、関係機関の協力を得て安全に十分配慮した上実施するものとした。(研究期間1年間)
a. 試験方法
上記2タイプの「退船システム」を使用し、IMO決議MSC.81(70)A.689(17)の主旨に沿って、当会において作成した試験方法によった。
b. 試験の種類
「海上退船システム」の荒天時性能確認等試験
c. 調査研究の評価及びまとめ
試験結果を解析して評価を行い、上記の2タイプの「退船システム」の荒天時性能等を確認し、「退船システム」に係る船員に対する周知啓蒙のためのデータ及び画像、さらに今後の性能改善のための基礎資料を入手することとした。