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1. まえがき

 

全世界的海上遭難安全システム(Global Maritime Distress and Safety System:通称GMDSS)が完全実施されてより2年経過し、船舶の遭難後の救助についてその実効が徐々にあがりつつあることは、誠に喜ばしいことであります。そして一方個々の海難事例における教訓も得られ、改良すべき点も浮かびあがってきているようであります。

(株)日本船舶品質管理協会は、救命機器としての捜索救助用レーダー・トランスポンダー(SearchAnd Rescue Radar Transponder:通称SART)の整備、保存点検等に取り組んでおりますが、遭難時のSART利用の実体を踏まえて「投下式レーダー・トランスポンダー」に関して、平成11年度から委員会を設けて調査研究を行ってまいりました。

もともとSARTは遭難船(遭難艇・筏・者)を捜索船のレーダーで発見し、ホーミングするために、船及び救命艇(筏)に備え付けるものとしてGMDSSのシステムの一つになっているものでありますが、便宜上(経済面を考えて)船に備えるものを、救命艇や筏に持込み易い場所に置いて、いざという時は持込むようにされております。そのため遭難者が乗っている救命艇(筏)のうちの1隻だけが、SARTを持っているという、船員にとっては誠に寒々しい状況にあります。

これらの問題点を改善するには、投下式レーダー・トランスポンダーが目指す小型化や軽量化が進められれば、低価格化や持ち運びの容易性が得られ、ひいてはすべての救命艇(筏)や遭難者にもSARTが装備される時代が来るものと信ずるものであります。そこで投下式レーダー・トランスポンダーとしての研究を行い、必ずしも遭難時に海に投下すべきものと決めつけないで、調査研究を進めることとしたものであります。

ここに2年間の調査研究を経て、ある程度上記の問題点を解決し得る方向を見い出すことができたと思うものであります。

 

 

 

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