日本財団 図書館


あとがき

 

本報告書は

・前年度から引き競いて代表的な舶用搭載機器である、ナブテックス受信機、電力制御装置、スピードコントローラーおよび油分濃度計の4磯種についてEMCの国際規格であるIEC60945第3版に準拠した伝導低周波イミュニティ試験、伝導エミッション試験を行った結果が報告されてある。

・機器の中にはIEC60945の基準に到達しない測定結果が得られたがシールドの強化、配線にフェライトコア、フイルターなどの挿入により規格に合格させることができた。現用されている船舶用機器にはIEC60945の基準を満たしていないものがあり、対策をとれば合格する可能性があることを示している。

・実船における電磁環境調査はカーフェリー「サンフラワー つくば」にEMC観測機器を搭載して茨城県大洗港と北海道苫小牧港の往復航路で観測を行った結果が報告された。ブリッジでの測定ではHFおよびVHF帯で港停泊時と離岸時にIEC60945の基準を越える妨害波が観測されている。入出港時には多数の電気機器がフル稼働するため大きな妨害波が発生したと考えられる。

同様に磯関室においても基準値を越える妨害波レベルが観測されている。

今後、船に搭載する情報機器などは高速で大容量の情報を取り扱うためイミュニティが強い機器とする必要がある。

搭載されたSバンドレーダからも妨害波の発生が確認された。レーダおよび通信機から発生するスプリアス(送信波に伴って発生する妨害波)を従来の-40dBから-60dBに下げる要求がITU-Rで国際的に決定した。レーダから発生する不要電波の低減対策が我が国でも関係者によって行われている。

当研究委員会では限られた4機種の機器のEMC測定しか行われなかったがCEマーキングを要求されるのは船舶搭載の全電気・電子機器に及んでいる。CEマーキングは欧州へ輸出する場合の適用条件であるが、EMC国際規格を合格させる要求は全世界的な動向であり、国内製品にも適用されつつある。日本ではVCCI規格の情報機器に対する業界の自主規制によって合格マークを貼るなどの現状にあるが国際規格との整合をとりつつあり今後のEMC規制はますます厳しくなると考えられる。

・報告書の別冊として委員会作業部会で行った測定データ資料に加えて

IEC60945の基準解説

CEマーキングの手引き

 

などEMCに関心をもつ関係者のために役立つ資料も添付してあるので参考にされたい。当調査研究委員会は日本財団の支援を得て、国土交通省はじめ関係各位の指導のもとに委員一同が努力を重ねて報告書をまとめることができた。ここにお礼申し上げこの報告書が船舶におけるEMC問題を取り上げる今後の第1歩となれば幸いである。

 

委員長 鈴木務

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION