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11. まとめ

誤作動防止対策は、シールドの強化、フィルタの入れ方およびグランドの取り方などのさまざまなノウハウに係わる職人芸のようなところがあり、理論的な推測を並行しながら対策を実施することが重要である。誤作動防止対策を重ねる過程で確実に防止対策のノウハウは蓄積され、その難しさや基本の大切さが修得されるものである。また、誤作動の原因となったノイズの発生源を突き止めることは、効果的な対策を施せる有効なヒントを得ることになる。対策すべき対象を特定できれば解決の近道となる。本調査研究では、これらの対策の方法とノイズの発生源の調査手法等について流れ図を作成した。この流れ図では全てをまとめ、表現できているものではないが対策を検討していく際に手がかりを探す手段として利用していただけるものと思う。

3ヶ年度にわたる誤作動の防止対策の調査を通じて、各供試品を対象に具体的な対策を講じてきたが、これらは各機器の個別的性能を強化したことに他ならない。本調査研究の重要な事項は、船舶という各種の機器が狭い場所に競合するように設置され、作動している環境でも確実に作動することの技術的な情報を調査することである。その一環として、停泊中のRO-RO船と航海中の旅客フェリーの実船調査を行った。RO-RO船の調査では、船橋内に設置されていた一部の機器で基準以上の電磁波が放射されているものがあった。しかし、船橋内という環境の中では詳細な測定を実施することが出来ず周波数スペクトラムは分からない。この問題となった機器はEMCに関する規格を取得しているものであった。船橋という複合的な環境で電源線の配線状況も不詳なことがあり、詳細な調査はできなかった。航海中の船舶の実船調査では軸発電機(サイリスタ式)で配電した場合に高調波含有率が多くなる一般的な結果が示されたが今回の調査では特に問題となることはなかった。個々の機器が、基本的にEMC関連基準に適合することが大切であり、さらに複合環境の船舶においても全体として誤作動を起こさないようにすることが船舶におけるEMC対策に肝要である。

 

船舶をとりまくEMC関連の環境は、SOLAS第V章航行の安全の改正により、航海機器のEMC規制の強化、船級船の自動化機器、特にM0船の電気・電子機器に対するEMC規制(近い将来は、IEC60945第3版等に合格しないと搭載できなくなる)に適合しなくてはならなくなる。すでにEU域内の諸国においては対象となる製品は、CEマーキングを付していないと販売流通できなくなっている。

今後、EMCに適応していることがメーカにおいて極めて重要となる。

 

 

 

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