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ジャクソン大統領時代の公務員制度改革の骨子は、公務員の仕事は何ら特別な経験や識見を必要とするものではなく、いわばだれにでもできるものという考えにあった。だからこそ猟官制が成り立ったのである。その名残はいまもある。今回も、何人かの被調査者は、公務員は待遇もよくなく、尊敬される職業ではないとまで述べた。それにもかかわらず、公務員が公共のために尽くすことは期待されるし、社会の信頼を集めていることが当然であることも、インタビューからは出てきた。このアンビバレントな反応にこそ、アメリカにおける国民の公務員に対する評価の特徴がうかがえる。

おそらくそれは、アメリカが本質的に流動的で競争的な転職社会であることに由来するのだろう。公共的な業務は、競争になじまないし、また、公共のために私的利益を犠牲にするという公務員のイメージは、競争の中で社会的な威信のはしごを上ろうというアメリカ社会の価値観の中では、異質な存在の面もある。だから、調査でもっとも評価が分かれたのは、公務員の身分保障であった。処遇が安定的な中で仕事をすることと、仕事の質が向上することが両立するということへの理解が難しいのではないかと考えられる。

それは、もう一つの、公務員、とくにキャリア公務員に対する著しい不信の念にもつながる。行政統制の組織が、複雑に絡み合い、外部では監視犬の役割を果たすマスメディアが常時活動している。

連邦公務員について言えば、幹部公務員の階層は、ノンキャリア(日本の国家公務員でいうノンキャリアとはまったく異なり、終身職の公務員ではないという意味である)の政治任命職(Political Appointee、PA)と大半はキャリア職員で一部にノンキャリアを含むSES(上級管理職員 Senior Executive Service)、それにキャリア職員のGS(一般職General Schedule)に分かれる。

政治任命は、大統領任命職と、SES、それにスケジュールC(各機関のトップと密接な関係にあり機密を要する職と政策決定に関与する職でOPMの承認を得たもの)に分かれる。大統領任命職は閣僚、大使などからそれに準ずる上級職で、上院の承認を要する職と要しない職に分かれる。常勤、非常勤を含めたPAの総数は約3,000人で、行政府職員の0.2%だが、行政権限では非常に強大であり、公務員評価への影響は大きい。

 

政治任命の数(1999年12月)

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