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3. ここ数年間の常用雇用者の退職状況

常用雇用者を減らした企業は以前より減ってきていることは事実であるが、実際の退職状況はどうなのか、退職の理由はリストラによるものなのか、あるいは他の理由があるのか等について若年者層と中高年者層のグループに分けて調査した。

(1) 年齢階層別の退職状況〔第5・6表参照

ア. 若年者層の退職状況

「入社後1年未満の者」、「入社後1年以上3年未満の者」、「入社後3年以上5年未満の者」の階層に分けて、ここ数年間の常用雇用者の退職傾向を「増えてきている」、「特に変化はない」、「減ってきている」に区分して聞いてみた。いずれの階層でもここ数年間は「特に変化はない」とする回答が3分の2以上を占め、入社後早い時期に退職する傾向はあまり変わらないという状況にある。ただし、「増えてきている」の回答は「入社後1年未満」では9.1%で1割に満たないが、「入社後1年以上3年未満」になると18.0%、「入社後3年以上5年未満」も19.0%と2割近くになり、この2つの階層は「減ってきている」の回答(前者13.8%、後者14.5%)と比べても「増えてきている」と回答した企業の割合の方が高くなっている一般に最近の20歳代、30歳代は、終身雇用より転職が当然と考える者の方が多く、企業の求心力が低下していると流布されるが、この調査でも若年者層の退職については同様の結果となっている。

1] 企業規模別

規模別に分けてみると、規模によって違いが現れてくる「5千人以上」は全体と同様の傾向にあるが、規模「3・4千人台」では各階層とも「減ってきている」が「増えてきている」の回答より多くなっているのが目立ち、特に「入社後3年以上5年未満」では「増えてきている」の回答が23.1%に対し「減ってきている」も30.8%あり、退職者が増えてきた会社と減ってきた会社に分された観があり、その結果「特に変化はない」の回答は46.2%と最低の比率になって現れている。また、「千人未満」では3つの階層全てで「増えてきている」が「減ってきている」を上回り、若年退職者が増えている会社が多いことをうかがわせるなど規模によって状況に差異があるようである。

2] 産業別

これを産業別にみると、「製造業」は集計社数の50%余りを占めていることもあって全体の傾向とほぼ同様であるが、「入社後3年以上5年未満」では「増えてきている」の回答が22.6%と各産業の中で最も高い数値となっている。次に「農林漁業、鉱業、建設業」はいずれの階層も「増えてきている」の回答は10%台であるのに対し、「減ってきている」が20〜30%で若年退職者が減る傾向にあるが、これはこの産業の多くを占める建設業の影響が大きい。また、「金融・保険業、不動産業」は「入社後1年未満」では「増えてきている」の回答が19.4%、「減ってきている」が6.5%、「入社後1年以上3年未満」では「増えてきている」が32.3%と特に高く「減ってきている」が6.5%、「入社後3年以上5年未満」は「増えてきている」が19.4%、「減ってきている」が3.2%と「増えてきている」と回答した企業が「減ってきている」とした企業より12〜25ポイント多くなっており、この業種の中で数の多い金融・保険業においては入社後5年未満で辞める若者が増えているようで、この業種での若年者層の定着性の確保はいずれ大きな課題となる可能性がある。

 

 

 

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