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延縄のしくみ

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3. 鰹(かつお)の一本釣り

鰹は水温20℃前後を適水温とする暖海性の回遊魚で、黒潮の北上とともに来遊し、秋期の親潮の発達とともに南下します。かつては鰹の回遊に応じた地元沖合での漁が主体でしたが、漁船の大型化と性能の向上に伴い、魚群を追って周年の操業を行うようになりました。特に大型船では赤道付近まで南下して操業するものもあります。この漁法の特徴は活きた鰯(いわし)を撒(ま)き餌(え)や付け餌として使います。そのため漁船は活魚艙(かつぎょそう)を備え、活き鰯を漁場まで運べるようになっています。鰹一本釣り用の鰯は沿岸域の旋網(れきあみ)で漁獲し、生簀(いけす)内で畜養(ちくよう)して狭い環境に慣らしたもので、鰹漁船の活魚艙で漁場まで運ぶことができ、撒き餌として海中に入れた後も船から離れずに、表層を泳ぎ廻って鰹を自船周辺に引き留めておく効果を持つと考えられています。この餌イワシが良好な状態で所期(しょき)の行動をとるようにするためには、船内での畜養(ちくよう)管理に高度の技術が必要とされます。また、この鰯は真鰯よりも片口鰯の方が良いとされています。なぜなら、片口鰯は通常、海中にまかれた後、表層付近で船について旋回し続けるのですが、真鰯は潜行してしまう傾向が強いからです。操業(そうぎょう)は明るい間に行います。魚群が表層付近で活発に動く日の出前後は群(むれ)を見つけやすく、喰いも良いからです。魚群を発見すると船を群に近づけ活き鰯をまき、それとともに舷側から散水を行い、鰯が水面で大量に群れているかのような状況を作って鰹の喰いを立たせます。この間、舷側に並んだ釣り手がカエシの無い擬餌針を使って、4m程度の竿で鰹を釣り上げ、甲板上の空中で釣り針からはずすように竿を操作します。釣り始めや鰹の喰(く)いが良くない場合には、生き餌を付けた釣り針を使います。船首・船尾の釣り台には熟練した釣り手が配置され、魚群を散らさないように竿を使い、船体中央部の釣り台には体力・技術に優れた者がつきます。撒き餌係は、魚群の動静を見ながら投餌します。鰹の喰いが立っている状態が1群当たり1時間以上続くことは稀(まれ)で、好・不漁は短時間で決します。漁場選定にあたっては、自船の過去の航海の漁況、他船の操業状況、水産試験場や漁業情報サービスセンター等の漁海況資料を参考にします。漁場付近では水温、水色(すいしょく)を観測しながら、魚群の発見に努めます。その方法には海鳥(うみどり)を目視やレーダーで見つけ、その動静を観察することによって間接的に魚群の所在を知る方法、流木などの漂流物や鯨(くじら)、鮫(さめ)、小魚の群等を探し、それらを追いかけて泳ぐ鰹群を見つける方法があり、それぞれ「鳥付き群」、「鯨付き群」、「木付き群」、「鮫付き群」及び「餌待ち群」と呼ばれています。また、曳縄漁具を船尾から曳き、中層の鰹群を見つける方法もあります。船の特徴としては、魚群を発見するための見張り台を持ったマスト、船首に長く突出したバウスプリットから船側の周囲を取り囲んだ釣り台、散水装置、鰯の活魚艙、などで、船の大きさの割に乗組員の数が多いことも特徴といえます。

 

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