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もう一つはダブル・ハルタンカーです。国際海事機関(International Maritime Organization: IMO)では1989年(平成元)の“エクソン・ヴァルディーズ”事件(アラスカ湾で“エクソン・ヴァルディーズ”が座礁。この事故で35,000トンの原油が流出。アザラシやラッコ、海鳥などに被害。)をきっかけに、原油流出事故を防ぐため、1993年(平成5)夏以降に建造される5,000トン以上のオイルタンカー全てにダブル・ハル構造が日本を含む133ヶ国に義務づけました。しかし、荒天時航海での船の事故や沈没、事故での原油流出による海洋汚染や生物への被害は跡を絶ちません。

 

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横断面積構造の比較

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ミッドデッキタンカーのしくみ

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3. LNGタンカー

最近、電力用や都市ガス用などの分野でクリーンエネルギーとして注目されているものの中にLNG(液化天然ガス)があります。メタンを主な成分とする天然ガスで、-162℃で液化しその状態で運ばれるきわめて低温の貨物です。LNGタンカーはこのLNGを専門に輸送する船で、アルミ合金・ニッケル鋼・ステンレス鋼など低温に強い素材をふんだんに使い、防熱対策も十分に施されたタンクが設けられています。その中に冷却されたLNGが積まれるのですが、このタンクは魔法瓶のようになっていて外の熱が入らないよう二重の防壁にかこまれています。LNGタンカーはタンクの形状によってタイプ分けされますが、代表的なのがモス独立型球形タンク方式と呼ばれるもので、球の形をしたタンクの半分が甲板上に飛び出しており一目でわかります。しかし、防熱のための工夫をしても、LNGは長い航海中の温度上昇によって、全体から見れば少しですが気化してしまいます。こうした気化したガスのことをボイルオフガスといい、可燃性のこのガスを大気中に放出するのはもったいないし、再液化はコストにあわないということで考えられたのが、これを燃料として使う方法です。このためLNGタンカーのエンジンはタービンエンジンとなっており、ボイルオフガスと燃料油の両方をボイラーで混焼(こんしょう)できるよう設計されています。大きさは最大積載量が125,000立方メートル(約70,000重量トン)のものが標準タイプと、オイルタンカーに比べると船型は小柄です。因(ちな)みにこの大きさのタンカー一隻が一度に運ぶ天然ガスの量は、約1,000,000戸の家庭が使用するガスの一ヶ月分に相当します。

 

LNGタンク(モス型のしくみ)

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