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No.6/36

 

船をうごかすI

 

1. 機関(きかん)

船を発明した人類は、やがてオールを使ったり、帆を付けて風の力を利用したりと、船を進めるための道具を開発していきました。長い間、帆の利用が主流でしたが、近代に入りさらに船を速く進める装置として機関が発明されると外輪船(がいりんせん)やスクリュー汽船などが開発されるようになりました。

今日の機関はそのほとんどが燃料を燃やし、その熱エネルギーを力に変えるものです。燃料には、石油や原子燃料などが使われています。機関は、この熱エネルギーを利用する方法によって、内燃機関(ないねんきかん)と外燃機関(がいねんきかん)に大きく分けることができます。内燃機関は、シリンダーまたは機関内部に直接燃料と空気を取り入れ燃やすことによって動力をとりだすもので、動力のもとは、燃焼ガス自身です。外燃機関は、ボイラーなどのように燃料を燃やし、その熱を使って水を水蒸気に変え間接的に機械の力に変えるものです。

 

2. 蒸気(じょうき)タービン

蒸気タービンとは、高温高圧の蒸気を、羽根車(はねぐるま)に吹きつけて回転させる外燃機関です。蒸気タービンの歴史は非常に古く、今から2,000年前のギリシャの数学者ヘロンが、蒸気の動力作用による回転体(蒸気タービン)について記しています。船舶の推進にタービンを用いて初めて成功したのはイギリスのチャールズ・パーソンズで、1897年(明治30)にヴィクトリア女王の在位60年を記念して行われた観艦式(かんかんしき)において公開されました。蒸気タービンは、同じ蒸気機関の中でも、蒸気の圧力でシリンダー中のピストンを往復させて回転する力を得る蒸気往復(じょうきおうふく)機関(きかん)と比較すると重量が軽く、大きな出力を出すことができるのですが、燃料消費量が多いため、高出力を必要とする軍艦、大型タンカー、大型客船などに使われてきました。しかし、水蒸気を作るための燃料である重油の値段が高くなり、経済性の面から最近ではタービンから重油の消費量の少なくてすむディーゼル機関が主流となっています。

 

3. ディーゼル機関

ディーゼル機関は内燃機関の代表的なものです。

シリンダーの中の空気を圧縮し、高温度になったところへ重油を吹き込むと、重油は爆発します。その爆発の力でピストンを上下させ、スクリューを回すのがディーゼル機関のしくみです。ディーゼル機関は、19世紀末に、ドイツのルドルフ・ディーゼルが発明したもので、それまでの機関と比べ1]機関の重さを軽くできる、2]機関室が小さくなる、3]燃料が節約できる、4]人件費が節約できる、などの利点があり、現在ではもっとも広く使われています。

 

4. ガスタービン機関

蒸気の圧力を回転羽根に吹きつけて回転運動に変える蒸気タービン機関に対し、ガスタービン機関は、蒸気のかわりに重油の燃焼ガスを直接回転羽根に吹きつけて回転運動に変える内燃機関です。このため、ボイラーがいらず、しかも蒸気タービンよりずっと小型で大馬力を出すことができます。

 

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三菱UEディーゼルエンジン

昭和28年(1953)、三菱造船(株)(現:三菱重工業(株))によって日本ではじめて開発された舶用(はくよう)大型ディーゼル機関の実験機

 

 

 

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