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3. 船の安定と復元力(ふくげんりょく)

水に浮かんでいる船が安定していることは、船にとって必要な性能です。船は普通、まっすぐに浮いていますが、これを少しでも傾けると、まっすぐな状態にもどろうとする力が起こる性質があります。この性質を復元性といい、その復元する力を復元力といいます。船をさらに傾けて、ある角度まで傾けると復元力がなくなり、ひっくりかえるようになります。この状態の角度を復元力の限度といい、この限度の大きい船ほどひっくりかえりにくいということになります。復元力の限度を大きくするには、船の重心を低くすることが必要です。しかし復元力の限度をあまり大きくすると、船はすこし傾いただけですぐもどろうとする力が働くことになり、乗り心地が悪くなり、積荷の荷くずれも心配になります。

 

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復元力の原理

 

4. 船の揺(ゆ)れと防止装置(ぼうしそうち)

船の揺れには色々な種類がありますが、船が左右にかたむく“横揺れ”をローリングといい、波の上で最も起こりやすい揺れです。また、船首と船尾がシーソのように上がったり下がったりする縦揺れをピッチングといいます。

現代の船には、船の揺れを防止する装置として、これまで使われてきたビルジキールの他にローリング防止機能としてアンチローリングタンクやフィンスタビライザーが取り付けられています。この二つのうち客船や大型オイルタンカーに使用されているのがフィンスタビライザーで、発明は三菱造船(現三菱重工業)の元良信太郎(もとらしんたろう)博士によるものです。フィンスタビライザーは、船の両舷(りょうげん)の船底近くに小さな翼を張り出し、揺れの大きさに合わせて翼の角度を変えることによって船体の横揺れをおさえる装置です。大正12年(1923)に対馬商船の“睦丸(むつまる)”に世界で最初に装備されて以来、現在のクルーズ客船などの乗り心地を大切にする船には、全てといってよいほど積極的に取り入られています。

 

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フィンスタビライザー

 

ビルジキール

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ビルジキールの実験模型

ビルジキールはイギリスのウィリアム・フルードが1850年(嘉永(かえい)3)に、船舶のローリング(横揺れ)を防止するために考案したものです。

船底と舷側(げんそく)のさかいのビルジに、鋼板(こうはん)を前後方向に長く取り付けることによって、ローリングを防止することができます。

 

 

 

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