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これらのことから結論づけられると思うのは、注意深く目的意識をもってテレビを見たり、新聞を読んだりすることは、社会活動への参加を遠ざける要因にはならないということです。そして問題となっているのは、社会全般の風潮としての注意力、集中力を欠いた態度や行動なのです。

 

経済主義がもたらしたもの

私がここで言おうとしているのは、現在のアメリカ社会がつくり出している人間―世代が下るほどそうなるわけですが―は、宗教的な性質の活動でもその他の活動でも、地域社会の中で積極的に参加するのが難しくなっているということです。また他人に対して人としての責務を果たすことが、なぜ“よい人間”であるうえで大切なのかを理解できなくなっているのです。複雑に入り組んだ様々な社会組織に対する責務が、「単純であっという間の相互的な関係」に取って代わることで、「われわれの社会的なつながりがその場限りの、特別な目的に基づいた、自己中心的なものになる」わけです(Putnam, pp. 183-184)。この変革は明らかに―ここまでで私は触れていませんでしたが―終戦直後の貧しい時代から始まり、世紀末まで加速度的に進んできた市場拡張、商業化の経済主義と深く結びついています。

 

 

 

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