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ある意味でそれは、私が四人の若い共著者とともに書いた『心の習慣』(Habits of the Heart, University of California Press, 1985, 日本語訳はみすず書房から出版)の内容を、膨大な量の事実に照らし合わせて裏付けたものと言えます。この本でわれわれが論じたのは、アメリカ社会の中で、急進的な個人主義の考え方が社会的義務を論じる古い考え方に取って代わっている、ということでした。

 

アメリカ社会に見る“社会資本”の減少

パットナムの本に書かれているのは、アメリカ社会のほとんどあらゆる側面において過去三十年の間で、彼の言う“社会資本”が急激に減っているということです。私の見地からすると“社会資本”というのは決して喜ばしい言葉ではありません。あまりにも社会科学的なテクニカル(学術的)な用語であるばかりでなく、経済を比喩に使っており、広く使われていること自体が残念な現象であると言えます。しかしこの言葉の裏に存在するのは、パットナムが“社会的つながり”と呼び、『心の習慣』の著者たちが“結束”とか“コミュニティ”と呼ぶもので、非常に現実性を帯びたものです。

 

 

 

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