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真の商人は先方も自分も利益を得ることを考えるものであると言っております。先ほどから宗教心の話が出ておりますが、今こういう道を教えなければ、世の中はますますおかしくなってしまうと思います。

私が結論として申しあげたいのは、宗教心、道という言葉もいいのですが、「自律」という言葉です。自分で規則をつくり、規範をつくり、それを守っていく。そういうことがいちばん必要な世の中ではないだろうか。傲慢であり、誠実さを失い、謙虚さを失うような現在の世の中で、それを自ら反省し、直していくためには自律心がなければいけないのではないだろうかと思います。

新しい資本主義社会ということで事前に打合せをしていて、私が思いついたのは「自律資本主義社会」です。自分で自分の道をつくり、それを守っていくような資本主義社会がいいのではないかということです。実につたない考え方ですが、そういうことを考えております。日清・日露戦争に勝って、日本には驕りが出てきた。その驕りが富国強兵であり、そして第二次大戦の初期の驕りになってきたわけです。そこから今バブル経済を経て反省期に入ってきているときに、やはり過去においていちばん役に立つのは梅岩の唱えていた道ではなかろうかと考えている次第です。

 

 

 

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