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そうすると公共交通機関のない地域では外出の機会がとみに減ってしまうわけです。そこで、高齢者も安全に車を運転できる、その次に公共交通機関にどうシフトさせていくか、また、公共交通機関を利用しにくくなる時点、例えば車椅子や寝たきりになると、個別輸送、つまりスペシャルトランスポートというものが必要な段階にはいってくる。この3つのプロセスをシームレスにつないでいく、どういう心身状況になっても移動を確保していくことによって、高齢者の生きがいを創出することもできます。日本の中で健康寿命というのを見ると、長野が一番健康寿命が長いのです。日本人の寿命は、男性77歳、女性84歳に近づきました。しかし、日本は世界一の長寿命国なんですが、日本は必ずしも年老いてずうっと健康でいるとは限らない、亡くなる前に寝たきりなど要介護期間も長いのです。都道府県別で比較すると、長野県はPPKと呼ばれる現象、つまり、ピンピン生きてコロッと逝く比率が高いそうです。元気な高齢者と移動との相関は高く、長野の高齢者は車を1人1台持っていて、移動の足が確保されている。つまり、自分で移動できるということがいろいろな社会参加の機会の確保につながり、生きがいを創出でき、健康も保てる。交通と健康というのはまったく別問題に考えられがちですけれども、移動性を確保していくということ、つまり、交通の面でお金をかけていくことが福祉分野での費用を圧縮していくことになる。あるセクターでコストが生じても、別のセクターでの利益が生じる、これをクロス・セクター・ベネフィットといいます。ですから、現在のように、自治体が財源難でバスのシルバーパスを切っていくというような動きも出ていますが、これは短期的にみれば、高齢者に配布しているシルバーパスの費用が若干、浮いたということになるんでしょうが、結果としてあまり豊かではない所得層の高齢者には、外出の機会を減少させることになるのではないかと懸念しています。

お手元に、資料をお配りしておりますが、今日は、1時間ということですので、これをすべて説明させていただくことはできないと思います。

それでは2ページ目からお話をさせていただきたいと思います。日本の高齢社会というのは皆さんいろいろお聞きになっていると思うのですけれども、大体特徴はここにお示しした6つで表されると思います。今、日本の人口の6人に1人が65歳以上の高齢者です。何歳からが高齢者かというと、はっきりした定義はございませんが、国連では高齢者を65歳以上でみて、統計を取っております。私どもで「何歳からが高齢者か」という意識調査をしましたが、大体自分の年齢よりも5歳くらい、高齢期を後にもってきています。

 

 

 

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