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特に自動車運送事業については、トラック事業を中心に重大事故が後を断たない現状であります。社会との共生を図る上で事故の防止は至上課題であることを常に認識していただくことが大事かと存じます。

九州運輸局としても、貨物自動車運送事業の適正化対策の一環として過労運転や過積載運行の防止等、事業の適正化を推進し、輸送の安全に努めて参ります。

なお、自動車の検査・整備制度については、昨年5月に自動車検査証の有効期間延長、自動車点検基準簡素化等の「改正道路運送車両法」が施行されてユーザー負担軽減が図られたところでありますが、このことは、反面定期点検整備の励行等使用者の保守管理責任を今まで以上に自覚していただくことが前提であり、今後も引き続いてユーザーの保守管理意識の高揚のために、自動車ユーザーの定期点検整備の励行促進等について積極的に取り組み、整備面からの自動車の安全対策にも努めて参りたいと考えております。

鉄道事業につきましては、昨年、帝都高速度交通営団日比谷線中目黒駅構内で、列車が脱線し衝突死亡事故を惹起するという鉄道事故史上特筆すべき痛ましい事故が発生したところであります。運輸省は、事故発生直後に「事故調査検討会」を設置し、脱線現象の解明を行うとともに同種の事故の再発を防止することを目的として、全国の鉄道事業者に対し具体的な事故防止対策を指示しているところであります。

九州運輸局としても、関係法令に基づく検査や点検整備等の励行をはじめとした所要の指導監督を行い、輸送の安全に努めて参るとともに万一不幸にして事故が起こった場合には本省とも協力し、事故原因の究明と再発防止の徹底に努めて参る所存であります。

海上輸送におきましては、フェリーや高速船の安全運航のための指導を強化し、ヒューマンエラーによる事故防止に取り組むとともに、プレジャーボート等の小型船の運航技術の向上と事故防止を図るため、小型船舶操縦士養成施設、更新講習機関等の指導・監督に力を入れて参ります。さらに船舶の安全・環境対策につきましては、従来からの検査業務に加え、内航海運事業者からの要望に応えるため昨年から開始されました任意の申請に基づき、内航船を対象として運航管理、船員の管理、保守・整備等の総合的な安全管理を目的としたISMコード(国際安全管理規則)への適合の審査業務を本格的に実施して参ります。また、外国船舶に対しましては、「海上における安全の確保」及び「海洋環境の保全」のため、船舶設備や乗組員の資格が国際条約の基準を満たしていない「サブ・スタンダード船」(国際安全基準不適合船)の排除を行う外国船舶監督(ポート・ステート・コントロール「PSC」)を実施しており、昨年2月からは、東京MOU加盟国で実施されたPSCのデーターをリアルタイムで検索できるデーターベースの稼働を開始し、欠陥船に対する監視が強化されました。PSCにより重大な欠陥を指摘された船舶については、毎月公表を行い、欠陥船の排除及び海難事故の未然防止になお一層努力して参ります。

なお、海事思想の普及は、海事関係諸施策を遂行する上で重要なものの一つでありますが、海上における安全の確保を再認識して頂くためにも非常に意義のあるものであります。7月20日の「海の日」を中心として、引き続きその啓蒙と普及に力を入れて参ります。

「安全の確保」は、私共関係者のみならず、交通・運輸事業に携わる皆様にとりましても最大の重要課題であります。年頭に際し、もう一度運輸の原点に立ち戻って再認識して頂き、公共性の高い交通・運輸事業の安全の確保に努めて頂きたいと存じます。

以上、九州の交通運輸・観光の各般について、九州運輸局の立場から所懐の一端を申し述べました。

本年1月6日から中央省庁が再編され、運輸省は北海道開発庁、国土庁及び建設省とともに、新たに国上交通省としてスタートいたしました。九州運輸局自体は従来の組織形態と変わることなく国土交通省九州運輸局となったわけですが、今後は、九州地方建設局と第四港湾建設局が統合して設置される九州地方整備局と連携を密にして、21世紀における九州の交通運輸及び観光をより充実したものへと発展させるべく、省庁再編を機に、職員一同一丸となって諸課題に取り組みたいと考えております。関係各位の益々のご健勝とご繁栄を祈念致しますとともに、本年も九州運輸局の行っております行政各般に対しまして格段のご理解とご支援を賜りますようお願い申し上げまして、年頭のご挨拶とさせていただきます。

 

 

 

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