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この法律に基づくバリアフリー化の基準には、今後新設される駅、旅客船ターミナル等にエレベーターや身障者用トイレを設置することや、新規に導入されるバスを少なくともワンステップ又はリフト付きとすることなどが盛り込まれております。これは、21世紀を迎え、これから我が国が世界に例をみない速さで高齢化社会を迎えるにあたり、今後の公共交通機関のあり方を方向付ける極めて重要な施策であり、従来から設けられているバリアフリーのための補助制度等の支援策と併せて、公共交通機関のバリアフリー化に積極的に取り組んで参ります。関係事業者の皆様におかれても、より一層のご理解とご努力をお願いする次第であります。

次に、環境対策についてであります。大気中のCO2(二酸化炭素)等の温室効果ガスの濃度が上昇することによって引き起こされる地球温暖化問題や大都市地域における工場や自動車から排出されるNOX(窒素酸化物)、SPM(浮遊粒子状物質)等によって引き起こされる大気汚染をはじめとする地域環境問題は、21世紀に向けて人類が生き残り、環境負荷の小さな社会を実現していく上で解決すべき重要課題であります。

このため、九州運輸局としても、関係の事業者や市民の皆様方のご協力を得ながら、自動車交通のグリーン化を進めるべく、低公害車の導入に対する支援、関係行政機関との連携の下での都市部における交通需要マネジメント(TDM)の導入、公共交通機関の利用促進、物流の効率化、「九州エコトラック推進協議会」の場等を活用した低公害トラックの導入促進、エコドライブの推進等の施策を一層強力に進めて参ります。また、折しも昨年6月には「循環型社会形成推進基本法」が公布されて環境保全のため循環型社会システムの実現をめざす動きが本格化して参りました。九州運輸局では、全国に先駆けて九州において自動車整備業界が取り組んでいる「環境に優しい自動車整備工場顕彰モデル事業」を推進するとともに、自動車のリサイクル部品の再利用と使用済み自動車の適正処理の推進を図って参ります。

続いて、交通運輸の各分野ごとの具体的な施策について触れてみます。

まず第1に、九州内の各都市間及び九州域外とを結ぶ幹線輸送対策として、高速交通体系の整備を図って参ります。

九州経済の一体的浮揚と均衡ある発展のためには、高速鉄道網の整備拡充が重要な課題であります。

建設が進んでおります九州新幹線鹿児島ルートについては、新八代〜西鹿児島間については約九割の路盤整備に着手しており、また船小屋〜新八代間についても、区間中最長の玉名トンネル(6075メートル)などの工事に着手するなど、順調に建設工事が進んでおりましたが、平成13年度予算案では、未着工だった博多〜船小屋間の着工を含め、博多〜西鹿児島間の全線フル規格化に向けた建設費用が盛り込まれました。今後とも国土交通省として工事の着実な進展を図り早期開通に努めて参りたいと考えております。また、九州新幹線長崎ルートについても、武雄温泉〜新大村間の短縮ルートが決定されるとともに環境影響評価手続がいよいよ大詰めを迎えており、早期着工ヘの大きなステップを踏み出そうとしております。

在来線の高速化については、日豊本線大分〜佐伯間の高速化に関する補助が平成13年度予算案に盛り込まれました。地域の声に応えるためにも、予算案の成立を受け、早期の工事着工が望まれます。

一方、九州では、他地域に類を見ない高速バスネットワークの拡充が続いております。

中でも、都市高速道路の延伸や九州縦貫自動車道との直結により九州の各中核間都市や空港を結ぶ交通機能が強化され、これにより高速バスの利便性が更に向上しました。加えて、昨年7月から西日本鉄道が導入した、いわゆる「1000円高速バス」は、利用者にとって低廉かつ分かり易い運賃設定として話題となり、新幹線や在来線特急との本格的な競争の端緒となるなど、様々な意味で九州の高速交通体系に革新をもたらしたものと考えられます。今後は、バス事業の規制緩和に伴い、事業者の更なる創意工夫などにより、需要動向に応じた高速ネットワークの充実が図られるよう期待するものであります。

海上旅客輸送においては、超高速船ジェットフォイルによって運航されている国際航路の博多〜釜山航路の輸送実績が韓国経済の急速な回復と九州における根強い海外旅行需要を受けて、前年の27%増と好調な成績を残し同航路の運航体制を2隻から3隻とすることが検討されております。離島航路においても高速船の増強が図られており、今後とも、利用者の利便向上のため、九州運輸局としても、運輸施設整備事業団の共有建造方式の活用等を通じ、主要航路における旅客船の高速化を推進して参ります。

第2に、域内の旅客交通対策として、地域交通の充実を図ります。

まず、都市内の道路交通の渋滞についてであります。これは、自家用車を中心とする自動車交通量の増大によるものであることは論を待たず、渋滞によってもたらされる交通遅延や環境悪化はもはや看過できないものとなっており、国土交通省としてこれに対応することは喫緊の課題となっております。道路交通渋滞の緩和のためには、公共交通機関の利用促進と円滑な運行が求められているところであり、各県の警察本部と九州地方建設局を中心に取り組みが進められてきましたが、九州運輸局としてもこの取り組みに積極的に参加し、鉄軌道、バス、タクシーそれぞれの特性を活かした利用の促進を図り、都心部における自動車交通のグリーン化を進めて参りたいと考えております。

 

 

 

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