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架橋前後での伊唐島港〜東町役場前間の所要時間を比較してみる。架橋前は伊唐島港〜宮ノ浦港間フェリーで10分。宮ノ浦港〜東町役場間は民営のバスで5分だが1日2往復しかなく、フェリーの発着にもうまく接続しておらず、多くの場合タクシーを呼んで相乗りしていたという。徒歩だと30分以上を要していた。架橋後は、前述のバスで所要時間12分となり、時間の短縮が図られた。

 

(橋の利用状況)

伊唐大橋の車両通行台数は、開通直後の8月末〜9月の約1ヵ月間の間で最高1日2,000台。現在では1日平均300台を数えている。東町内の車と町外の車との比率は約6:4である。架橋に伴い、島内の自動車保有台数も増加傾向にある。

 

2) 架橋を契機とした地域振興プロジェクトや関連基盤整備への取り組みについて

 

架橋建設に先立ち、伊唐島内に新規農地造成、畑地かんがい事業が行われている。

伊唐大橋公園整備事業、さらには島を訪れた人の小休止の場として、9年度〜10年度に伊唐港地区に公園整備が進められ、あずま屋・ベンチ・水飲み場・トイレなどを設置。

 

3) 架橋による産業への効果・影響について

(農業)

架橋建設に先立ち、昭和61年度〜平成6年度にかけて81haの新規農地が造成され、平成8年度〜9年度にかけて同じく81haの畑地かんがい事業が行われている(事業名:畑地帯開発整備一般型事業伊唐地区)。伊唐島の農地面積は、造成前の90haと合わせて171haとなり、農家一戸あたりの農地面積は、造成前0.88haから1.7haへとほぼ2倍となった。

伊唐島は赤土・無霜地帯であり、バレイショ栽培に適した条件を備えていることから、造成前はバレイショを基幹作物とし、裏作として甘藷・豆類を栽培していた。現在は、基幹作物としてのバレイショの位置づけが一層高まり、早春バレイショは12月植え付け2月収穫、春バレイショは3月植え付け5月収穫、6月からは裏作の甘藷栽培、というサイクルで営まれている。遊林地はなく、ほぼ100%作付けされている。造成前の昭和60年、67百万円だった生産額も、平成4年には225百万円と3.4倍に増加している。伊唐島は平成8年2月には、鹿児島県から「新・農村振興運動重点地区」の指定を受けている。

 

伊唐島から長島本島への搬出はフェリーに依存していたことから、天候に左右され、フェリーの発着時刻に合わせる必要があるなど制約も多かったが、架橋後はそうした制約がなくなり、輸送の安定性が確立された。また、出荷経費・労働経費が軽減されたこと、出荷方法を選択できることも大きなメリットである。

以上のような架橋の効果から、生産者の経営意欲の増大も図られ、Uターン農業青年も2名あった。

 

 

 

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