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表I-2-2 十五夜・十三夜に供えたススキの扱い方

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2] 芝棟について

草屋根では、しばしば棟の部分に特定の植物が植え込まれていた。これは、屋根の要である棟の補強を目的としたものであり、かつては芝土が広く利用されたことからこれを「芝棟」という(亘理俊次『芝棟』、1991)。

丘陵周辺地域では、東京都側の東大和市の文献に記録があり、それによると、「草屋根の時代には、棟に岩松をのせた。根が下まではるから風で飛ばされるのを防げた。雨が降れば水分を含んで重くなったので、止まる力も強くなった。岩松は乾燥に強い植物で普段は軽かった。棟には岩松のほか雪の下やシチシバなども乗せた。しょうぶやあやめなどの球根を乗せておくと、毎年花が咲くことになる。」とある(武蔵野美術大学生活文化研究会『東やまとの生活と文化』、1983)。

これをみると、当時の大和町周辺(現東大和市)では芝棟の植物としてイワマツ、ユキノシタ、ショウブ、アヤメ、シバ等が利用されていたことが分かる。他の丘陵周辺地域については資料が見あたらないので不明であるが、聞きとり調査では唯一入間市において「昔は麦カラ屋根の上にカンソ(ノカンゾウあるいはヤブカンゾウ)が生えていた」ことを確認しているので、当時は芝棟をのせた草屋根もそれほどめずらしい光景ではなかったものと考えられる。

(3)暮らしと燃料

1950年代以前の里山の暮らしにおいて、日々の燃料を確保することは現在の私たちの生活からは想像できないほど切実な問題であった。当時の燃料といえば薪や炭が主体であり、農家では自給を建前とするのが暮らしの基本となっていた。

 

 

 

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