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薪は、ヤマをある一定の年数で伐採して得るのが普通であるが、所有するヤマが少なかったり、あるいは全くヤマを所有しない農家にとっては伐採木の薪(特にコナラやクヌギ)はたいへん貴重な存在であった。そこで日常の燃料としては表I-2-3に示すように、実にさまざまなものが利用された。このうちクワの古株や枝は丘陵周辺で広く営まれてきた養蚕と深くかかわっており、また落ち葉やソダ類(木の枝等)はヤマや屋敷林が主な供給源となっている。

 

表I-2-3 日常生活で利用された燃料

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注)・●は利用頻度が高いもの、▲は頻度がそれほど高くないものを示す。

・コナラ、クヌギの堅木の薪は、主に特別な日や来客時に使用された。また商品として販売された。

 

3)身近な動植物へのかかわり方

(1)動物による被害と防除について

里山の生活では、そこに生息する動物たちとさまざまな場面でかかわりをもつ機会が多かった。特に生業を営むなかで経済的な実害を被るようなケースでは、それなりの防除を実施する必要があり、いくつかの具体的な事例が知られている。

聞きとり調査では、ネズミ除けや水田稲作における鳥除けについての伝承を採集したが、それ以外にも人びとは哺乳類、鳥類、両生、爬虫類、昆虫類等の幅広い分野でいろいろなかかわりをもっていた(表I-2-4)。

(2)民間療法

里山の生きものに対する民間知識を代表するものとして民間薬の使用がある。表I-2-5は、聞きとり調査と文献資料の記録を整理したものであるが、その結果15種類の動植物について合わせて13の用法に利用されていたことが明らかとなった。そのほとんどは特定の症状に効用があるとされている。ただ、ユキノシタで3つ、ドクダミで2つの効用があるなど、地域によって使い分けられている点は興味深い。

 

 

 

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