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表I-2-1 屋敷林の樹木とその利用

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注)カシ類にはシラカシ、アラカシ等、シデ類にはアカシデ、イヌシデ等がある。

 

里山を活用した農業が営まれていたころには、竈(かまど)や囲炉裏(いろり)など直火を扱う場所での火の始末やとり灰(農業で利用する灰)の管理の不手際から出火する事例が少なからずあり、一度火災が発生すると草屋根の家は延焼に対して全くの無防備な状況であった。そこで屋敷や家の周囲に高垣を設けて飛来する火の粉や熱風を防ぐ手だてが講じられたものであろう。

具体的にシラカシがどのような防火の働きをするのかという点については、多摩湖(村山貯水池)の湖底に沈んだ村の記録をまとめた文献に、「山沿いの方には防風林はなかったが、平地には屋敷林があって樫が多かった。それは樫の葉が火にあおられると自ら水分を出してふくらみ、風を外にあおり防火の役目をしたからだという。」という記述がある(東大和市教育委員会『多摩湖の歴史』、1989)。

カシグネは、土地が変わると「モチグネ」になり、シラカシではなくモチノキを高垣に仕立てたものとなる。こちらも目的は同じであり、防火が重要な意味をもっている。利根川流域では「モチノキが水分を出して火を消してくれる」という伝承があり、まさに狭山丘陵の事例と同じ理由によるものである。

 

 

 

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