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西狭山ケ丘や北野は林分の面積が狭く、市街地に囲まれた立地となっている。特に北野は雑木林というよりは屋敷林に似た植生であり、屋敷林で多くみられるメジロが他の地区よりも目立って出現している。宮寺(約23,800m2)や駒形富士(約46,200m2)の平地林の場合は、それぞれに大きな面積を有し、周辺には農地があるものの工場等によって緑地が分断されている。特に宮寺は個体数こそ多かったが、清掃工場や調整池、農耕地、家禽小屋に隣接した孤立林であることから特有の種組成となった。また、ここでは「ねぐら」として利用しているハシブトガラスが個体数を増やしている。

一方、丘陵から離れた地区として、埼玉県側では所沢市北中(No.3)および三富地区(No.4、9、10、11、12、15、16、17)、東京都側では東村山市青葉町(No.21)、小平市上水新町(No.20)がある。上富地区はヒヨドリ、ハシブトガラス、シジュウカラが主で農耕地型と考えられる。牛沼と下新井(No.7)は、エナガやオオタカ、ウグイスが出現し、農耕地型というより丘陵のようにまとまった緑地帯にちかい鳥相という印象が強い。東京都側では、いずれの地区も市街地に囲まれているため、都市鳥を主体とする特徴が強く表れたようである。

(5)平地林のおける鳥類の生息環境

今回の調査は各地区1日ずつであったが、こうした水平構造の違いが出現種の大きな差となって示されているようである。生息環境の概況としては、(I)農耕地に隣接し、管理型の連なった緑地をもつ北中と三富地区、(II)丘陵に近く農耕地に隣接し、非管理型の連なった緑地をもつ小手指地区、(III)農耕地と工場に隣接する孤立した緑地をもつ入間市および瑞穂町の地区、(IV)宅地と道路に隣接する孤立した緑地をもつ東村山市および小平市の地区に分けられる。

(I)ではヒヨドリ、ハシブトガラス、シジュウカラ、キジバトが、(II)ではヒヨドリ、ハシブトガラス、コゲラ、メジロ、ヤマガラ、カケス、シロハラが、(III)ではヒヨドリ、ハシブトガラス、スズメ、ムクドリ、コゲラ、カワラヒワ、オナガが、(IV)ではヒヨドリ、ハシブトガラス、シジュウカラ、ムクドリ、コゲラが、それぞれ主である。

一般的に、鳥類では種によって環境選択の幅に差がみられることが知られている。スズメやオナガのように主に人家近くの農耕地や林を生息域とする種、ハシブトガラスやヒヨドリ、シジュウカラのように人家から林内まで幅広く生息する種、あるいはハシブトガラス、ムクドリやキジバトのように都市の市街地でも生息する種は都市鳥ともよばれ、都市公園やビルの屋上、送電線等でよく観察される。

三富地区や入間市、瑞穂町の地区では、人家近くの農耕地や平地林に生息する種の組成が確認された。小手指地区では、林床において管理型と非管理型が混在し、どちらかというと狭山丘陵の植生に似ているため、ヤマガラやカケスのような丘陵性の鳥種が生息しているものと思われる。東村山市や小平市の地区は、ある程度の面積をもつ林分があるが、周囲を道路や宅地に囲まれて孤立しているため鳥種は少ないものとなった。

 

 

 

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