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(2) 水田等の保存活用

1] 地域の資産としての保存の重要性

前項で水車群の維持管理方策についてふれたが、日本の農村の原風景ともいえる朝倉町の農村景観は、水車群と堀川用水及びその借景となる水田風景との構成によってはじめて成立する。モデルゾーンの「堀川用水沿いの交流ゾーン」では、特に水車群と周辺の水田については朝倉農業農村文化の象徴として、水車群と一体のものとして、地域の資源としての保全活用方策の検討が重要な課題である。

いうまでもなく水車群周辺の水田の存続は、現状では農地所有者の意思に掛かっているが、減反政策や後継者不足など特に米麦農家を取り巻く環境は厳しく、これを将来にわたって維持していくためには、朝倉エコミュージアムの全体構想のなかで地権者の理解と協力を得ることが前提となる。地域住民が散策などで自然に足を向ける憩いの場として、あるいは都市住民の農業体験や憩い、交流の場として活用することで水田機能を維持していくことが望まれる。

 

2] 生産の場から学び、憩いの場へ

特に、本調査研究で水田風景の保存エリアに指定されている農地については、堀川用水沿いゾーンにおける体験、交流機能の基盤として位置づけ、福岡都市住民の自然志向や小中学校の農業体験、環境学習であると同時に、地元住民の憩いの場、都市住民との交流の場として活用することで水田機能を維持していくことが望ましい。農地の確保は水田の維持を前提に、行政が賃借し、企業組合等に運営を委託する等所有の移転を伴わずに行政負担を最小化し、かつ民間の創意工夫によるサービスの向上を確保する方策を検討するなど柔軟な運用が望ましい。用地確保や施設整備等に関しては、以下に事業展開の展開例を示す。

 

a. 水田オーナー制度

都市住民を対象に水田保存エリアのオーナー募集を行い、収穫体験やオリジナルブランドの有機無農薬栽培の収穫米や、米加工品、朝倉特産農産物等を直送する

 

b. クラインガルテン(市民農園)

都市住民を対象とした契約農園。クラインガルテンは独語で「小さい庭」を意味し、日本では市民農園と呼ばれる。減反などで増え続ける遊休農地の有効利用と都市住民の自然志向が一致して各地に拡がっている。年間賃貸を原則とする長期滞在型と、収穫時等期間限定の短期滞在型がある。クラインガルテンには市民農園の他に以下のような施設例がある

○モデル農園:地元農家による美しい見本となる農園

○収穫体験農園:収穫時には農園契約者以外の利用も可能な農園

○フラワーガーデン:ガーデニングのモデル農園

○農家レストラン・農芸クラフト体験教室:収穫農産物の加工活用施設

○交流イベント広場、バーベキュー場:地域住民の利用・交流施設

 

 

 

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