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第五章 生活風土空間整備基本構想(朝倉エコミュージアム構想)

 

1. 朝倉町の課題

ここでこれまでの現況調査に基づき、本町の課題を整理する。

 

(1) 暮らしに関わる豊かな自然環境を活用したまちづくりの必要性

1] 住民は生活に根ざした地域資源の次世代への継承を希望

住民へのグループインタビュー調査や各種団体へのインタビュー調査でも、住民は三連水車をはじめとする地域固有の資源に対しては中途半端な整備よりも自然のままの保存(復元)・活用を望む声が多い。

町外の人に本町を説明する際に、三連水車は説明の道具としては引き合いに出すが、実際には「何もないところ」という回答が多かった。しかしよくよく話を聞いてみると、男性は自分だけが知っている魚釣り、虫採りの場所があったり、女性は季節の花や、高齢者は史跡や散策コースなど自分たちの生活に結び付いている大事な場所がある。一方で町内に子どもを遊ばせたり、大人がくつろげる場所への要望が強い。町民一人ひとりの本町の心象風景(子どもの頃の記憶や印象に残る場所)や実生活にうるおいを与える場所を大切にしながら、自然や風土を次世代に継承していくことが求められている。

 

2] 都市住民の観光・レクリエーションニーズヘの対応

また旅行代理店へのインタビューでは、近年の健康志向の高まりによるウォーキングニーズや、2002年度から実施される総合学習制度で地域の自然や歴史文化を教材にした学習や自然体験活動の受け皿が求められる中で、産業遺産としての高い評価も受けながら現在も実働する水車群や、斉明天皇ゆかりの史跡等豊かな自然、歴史文化資源を活用した本町の観光・レクリエーションの可能性については高い評価を示す一方で、現状では周辺の観光地へ移動する際の時間稼ぎの通過点という厳しい指摘があった。このような都市住民の観光・レクリエーションニーズに対応しうる可能性も視野に入れながら、地域住民の生活の質の向上と共に、町外の人も気軽に本町の自然・風土を楽しめるような開放型のまちづくりを行うことが望ましい。

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「朝倉町は何もないところ」という住民の意識と、「可能性は高いが現状では通過点」という旅行代理店の評価、いずれも本町の地域資源のもつ可能性と現状との乖離が著しい。地域住民の生活や観光市場に受け入れられる地域資源の保全と活用が必要である

 

 

 

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