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自治体の地域づくりビジョンと地方税

 

日本大学経済学部専任講師 沼尾波子

 

1. はじめに

分権時代における地方税源充実の必要性

自治体の直接的対応(超過課税・法定外税の創設)の可能性と限界

住民に対する情報公開と合意形成を通じた新税創設

 

2. 「神奈川県地方税制等研究会」での検討 ―地域づくりビジョンから税制を検討する

1] 研究会での議論

「少子高齢化時代の到来を迎え、多種多様な住民ニーズに応えられる確固たる財政基盤の確立が必要不可欠」

「これからの時代に適合し得るような、新たな産業構造に見合いつつ、また生活空間としてのアメニティーを向上させるための基盤整備や環境整備ができる財源確保に適した税制について検討する」

⇒・国から地方への税源委譲

・現行税制の中で認められた課税自主権の積極的活用(超過課税・法定外税)

 

2] 超過課税について

・「財政上の特別の必要性」がある場合にのみ実施できる

・経常経費への充当は不可(対人サービスにかかる財源への対応をどうするか)

 

3] 許可制から事前協議制へ(法定外目的税創設と法定外普通税の許可制廃止)

・同意要件(1:国税または他の地方税との重複の回避、2:住民の負担が著しく過重にならないこと、3:流通への重大な影響の回避、4:国の経済施策との適合)

・「生活環境税制」の可能性

 

3. 住民との合意形成

1] 税負担に対する神奈川県民意識調査

(平成12年7月実施。県全域3,000人に対する標本調査。郵送。回収率57.4%)

・県民が求める緊急課題に対応する施策を実施するため、新たに地方税を創設するといった増税の是非については「新たな施策が必要で納得できるならやむをえない」とする回答が最多。

・神奈川らしい税を創設するに当って念頭におくべき施策として「自然環境や生活環境を改善するための対策」と「福祉杜会の基盤づくり」が最大で52.5%。

 

 

 

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