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また、これらの地方債発行は国による地方財政対策の財源手当の状況によって伸縮するものであり、個別の地方公共団体の財政運営の責に帰し得ない事情によって変動する財政分析指標では個別の地方公共団体の数値の評価や時系列比較を行うことが難しくなる。

 

○起債制限比率

起債制限比率の分母は標準財政規模から交付税措置される公債費を除いたものであり、臨時一般財源等とされる地方債のうち普通交付税の基準財政収入額に算入される減税補てん債等については標準財政規模に算入されることになるため指標に影響を与えないが、新たに発行することとなる臨時財政対策債については、その発行可能額を普通交付税の基準財政需要額から減額することとされているため、これに伴い基準財政需要額が減少する結果、標準財政規模が小さくなり、起債制限比率が上昇することとなる。

しかし、臨時財政対策債は国による地方財政対策の財源手当の状況によって伸縮するものであり、個別の地方公共団体の財政運営の責に帰し得ない事情によって変動する指標により個別の地方公共団体の地方債の制限を行っていくことは適当ではないのではないかとも考えられる。

 

(2) 特定財源に整理されるもの(財源対策債、減収補てん債等)

最近、地方財政対策による地方交付税の振替財源的な性格を有する財源対策債、減収補てん債等の地方債の額が増大しており、昭和50年代には1兆円程度であったものが、平成6年度以降は3兆円程度となっている(資料参照)。この影響により経常収支比率及び公債費負担比率が押し上げられている。

また、発行に伴い普通交付税の基準財政需要額を縮減することとなる財源対策債等については、起債制限比率も押し上げる影響がある。

 

○経常収支比率

財源対策債等は、地方税や地方交付税が不足するため、振替財源的に発行される地方債であるが、地方財政法第5条等により特定の経費に充てるため発行される地方債であり、特定財源として分類されている。

このため、本来地方税や地方交付税等経常一般財源等として収入され経常収支比率の分母に算入されるべき財源が地方財政対策により財源対策債等に振り変わることになると、経常収支比率の分母が小さくなり、経常収支比率が上昇することとなる。

 

 

 

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