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(3) 超長期的な視点からの考察

住宅は、木造でも30年程度の期間居住可能な耐久財であり、フロー(戸数の増減)とストック(総数)の2つの性質を有する。このため、居住問題の考察には、将来にわたる時間の視点が必要である。時間の経過は、人口を変化させ、住宅の需給環境を変える。それは、人々の居住行動を変化させる。

国立社会保障・人口問題研究所の推計では、わが国の人口は、2010年頃から減少に転ずるとされている。また、同研究所小地域簡易将来人口推計システムによれば、出生率等の条件が1995年国勢調査結果と同じとすると、広島市においても同じ頃から減少に転じることが予測されている。

仮に全市的に人口が減少する場合、どの地域の人口が減少し、どのような影響が現れるのか現時点では不明である。

ただ、住居の問題に絞れば、人口の減少は、住宅の需給を現在より緩和させ、住宅の価格を全般的に低下させると考えられる。このことは、住宅の選択において、住宅価格の意義を相対的に低下させ、住環境(居住環境と周辺環境)を重視させるようになる。

超長期においては、住環境による住宅の選別が現在以上に進み、住み易い環境を提供できる地域に人々は住居を求めるであろう。そのとき、都市の利便性と自然環境を兼ね備えた都心は魅力的である。その意味で、人口の空洞化を避けるためには、「居住」の視点からまちづくりを進めていくことが重要であり、居住を促進し、活力を維持・発展させることにつながるであろう。

 

 

 

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