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家賃補助は、その即時性から、補助対象を明確にするならば政策目的に対して一定の効果をあげ得る施策といえるが、地域全体の居住環境の改善には寄与しないため、住宅政策としては留意が必要である。

居住者への支援策としては、他に、転居費用の助成や住み替えの斡旋、公的保証人等があげられるが、これらの施策を行政が行うことについての妥当性や、その効果についてはなお議論のあるところである。

 

(5) 公共による居住環境等の整備

居住環境の整備として最も典型的なのは公園・道路等の公共財の提供であるが、これらは本来であれば都心居住を促進するか否かに関わらず、住民の意思を踏まえて地方公共団体が行うべき事項である。

しかしながら、総理府が行った「住宅・宅地に関する世論調査」によれば、都心居住に足りないものとして、「日当たりや風通し」(39.5%)、「きれいな空気」(39.3%)、「公園や緑地、子どもの遊び場」(30.5%)等が上位に挙げられており【図2】、居住環境の整備は依然として都心居住を進める上で重要な要素の一つであるといえる。特に、前述(3)における規制的・誘導的手法を実施するにあたっては、狭隘道路の改善等、地域インフラの整備と組み合わせて行うことが必要であるとの意見もある。

また、歴史的な街並みを有する地域においては、その保存・活用を支援することや、防災上の観点から密集市街地の面的整備を行うなど、個々の地域特性に応じた取り組みもみられるところである。

 

(6) まとめ

2(1)においても述べたとおり、都心居住の促進にあたっては、高齢者の増加や、少人数世帯の増加等の社会情勢の変化の見通しを踏まえ、各都市の将来像を描き、個別具体的な政策目標を見据えた上で、財政負担の軽重等特性に応じた適切な施策を選択し実施していくことが重要であろう。また、都心居住を促進するにあたり障害となる又は必要な国の制度等があれば、その妥当性を見極めた上で改善・整備を求めていく必要があろう。

 

 

 

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