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われわれの論題は簡単である。産業化時代に発展し、緩慢で中央集権の官僚制、規則や準則への没頭、そしてヒエラルヒーに沿った命令系統を持つ、そういう種類の政府はもはやよく機能しない。そういう政府は往時はすばらしい成果を上げたが、時の流れの中でいつしか去りゆこうとしている。そういう政府は膨れ上がり、無駄でいっぱいだし、非効率的である。そして、世界が変わり始めても、そういう政府は一緒に変われないだろう。ヒエラルヒー構造を持ち中央集権的な官僚制は1930年代から1940年代に立案されたのだから、1990年代の変化が急速で情報がいっぱいの知識集約型社会・経済ではよく機能しないのだ。

 

オーストラリアの批評家ヒュー(1998, pp.38-9)も、同じ線で論を展開している。

 

伝統的なモデルは厳格で官僚制的で、注意が局所的に集中しており、構造と手続きに専心している。しかしながら、以前に存在したものよりははるかにましだ…。しかしながら、長年にわたり価値あるサービスを提供してきたにもかかわらず、伝統的なモデルには大きな批判があがっている…。伝統的なモデルは長い間優れたモデルだったが、もはやそういう時代ではない。

 

ヒューは、マックス・ウェーバー(Weber, 1947)の書物に登場する、合理的/法律的官僚制という理念によって分類される伝統的モデルに結びつけて論を展開した一人である。この手の組織は、以下の特徴を持つ。

 

・固定的な管轄範囲

・業務の明示されたヒエラルヒー

・官民の職員の役割(資産)の明瞭な区別

・行動の基礎としての専門特化と熟練

・官吏の専従かつ専門的訓練を受けた者の任命

・発展的なひとまとまりの規則、とくに関係官吏の技術的適格性となる知識の適用によるマネジメント

 

これは、より柔軟で、素早い対応と実績志向の近代組織の形態によって取って代わられる必要があるといわれているタイプの体制である。本章のもっと前の段で論じた行政文化のさまざまなタイプのうち、どれが伝統的モデルにもっとも近似しているか―それは「法治国家」モデルである。したがって、この線で解釈すれば、ドイツのような国は「後進国」であり、「先進諸国」であるニュージーランドや合衆国の国家実績概観(National Performance Review)などに追いつくためには、「大改造」か、「ニュー・パブリック・マネジメント」をもっと活発に行う必要がある。

 

しかしながら、不運なことに、「オズボーンとゲイブラーの解釈」とでも呼ぶべき論は誤解を招くほど巧妙だし、単純にすぎる。同解釈は細かな批判をたくさん受けてもおかしくないが、ここでは、概括的な3点のみを取り上げる。第一に、本章のもっと前段で驚くほど明瞭になったように、何年にもわたり、行政システムのタイプは現存するもの一つだけでなく、いくつかあった。

 

 

 

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