日本財団 図書館


一般論として押さえておくべき第二の点は、多くの改革において‘計画性の程度’を誇張するのは簡単だということである。図中の(囲みO)に示されている、改革の努力の最終的な結果は、エリート集団の、変化のための最初の声明書(囲みM)に具体的に表現されている意図との関係が緩やかな場合にのみ、それとの関係に耐えられる。ゴッディンは、以下のように指摘している。「慣行とは、意図的活動の失敗―副産物を度外視すること、さまざまな意図的活動が互いに齟齬を来すこと、意図が誤った方向に導かれること、単に過ちが犯されること、など―の産物であることが多い。それゆえ、われわれはエリート集団による意思決定を改革のプロセスの中央においたし、われわれは語らねばならない説にとって制度の再設計という意図的行為が重大だと主張するが、だからといって組織のエリート集団を、大胆にして広範囲におよぶ改善構想を日常的に行うことが可能な、神にも等しい設計者にまで高めるものとして本書を読むべきではない。その逆に、われわれはそうしたエリート集団の構想を、認識の限界や領域を侵害する行動、政治行政上の障害、きわめて多種多様な性質の予期せぬ展開に対して無防備な場合が多いものだと見ている。(こうした、認識と動機付けと、その双方にかかわる陥穽の、より詳細な説明は、(March and Olsen, 1996第6章を参照のこと)。これらの複雑なファクターのうち、もっとも突出しているものについては、本章の後段で論じる。

 

029-1.gif

 

ここで、まず社会経済的ファクター(囲みA)から始めて、これらの影響のそれぞれについて、より詳細な検討に入る。囲みAは、これらの、広範にわり、しかも多種多様なファクターの一般的組み合わせを示している。こうしたファクターの中には根が深く、永続性があるという意味において、‘構造に関わる’と考えられるものもある。また上昇と下降を繰り返す短期的経済循環など、もっと短命かもしれないものもある。これらのうちには、国家行政に対して、決定的かつ認識可能な影響を持ちかねないものもあり、これが囲みB、C、,D内のファクターである。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION