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FINALIST'S PROFILE

窪田隆二(日本)

Ryuji Kubota, japan

 

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1965年10月13日生まれ。18歳より独学で作曲を学ぶ。1990年より神奈川県内の私立高校の現代文教諭。

 

programme note

オーケストラのための「石/星」

Stein/Stern for orchestra

光を奪われ、廃墟の無機物にも等しくなった者たちが、彼方から即自的な光を放つ「星」としての「石」(鉱質打楽器)たちに、どのような息遣いや声で近づけるのか、それがこの曲の出発点でした。遍在し沈黙する音たちの破片は、それだけでは名も意味も持ち得ない、ただの「物」です。しかし彼らに固有の振動があるならば、光に響き合い、光の痕跡(余韻)を追うことによって形作る一瞬の音の「星座」は、一つの可能態としての輝きを放てないだろうか。そして、その不可視の光は、未だ沈黙している「石」たちを救い出す、導きの星となる事が出来ないだろうか。

だからこの曲は、「石の眼差たちを追う旅」(パウル・ツェラン)、いつも途上にある旅です。

 

FINALIST'S PROFILE

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1969年2月2日ハンブルクに生まれる。12歳でクラシック・ギターとピアノを習い始め、作曲も始める。1988年から95年にかけて、ハンブルク音楽大学と劇場にてウルリッヒ・レイエンデッカー氏に師事し、作曲と理論を学ぶ。その後、フリーの作曲家として活動する一方、1989年よりPeer Music Germany(出版社)のポピュラー音楽のアレンジャーを務める。2000年には第1回ゲッティンゲン・ギターセミナーにおいてギターソロ曲で第3位入賞。

 

programme note

形象―鏡像

Gebilde-Gegenbild

《形象―鏡像》(1999)は、ここ5年の間に書かれた一連の作品(これとは異なりすべて室内楽曲だが)のしめくくりとなる曲である。これらの作品は、すべて、様々な軋轢と矛盾を扱うという共通の要素をもっており、それが時間―速度や空間―間隔の比率といった音楽的パラメータに変形され、独自に差別化された音楽の永続する対立として表現される。

この標題で私が明らかにしたかったのは、スコアのなかで主に垂直方向に見える重要な構造上の特徴である――すべての表象は、各部分が時間経過の相と垂直面のなかに分解してゆくように結び合わされている。このようにして、それぞれの部分は常にその鏡像(Gegenbild)をつくり出す。すべての部分が集まって「形象」すなわち(音楽的)対象物、それぞれの構造、そして「作品」、をかたちづくる。

楽譜の末尾に、パーシー・B・シェリーの詩「解き放たれたプロメテウス」の一節が引用されている。

 

…そして、一つの音、上に、まわりに一つの音が下に、まわりに、上に動いていた、それは愛の根源だった…

 

 

 

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