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堂園 今の子どもへの死の問題ですけども、私は、できるだけご家族の臨終の席、臨終のちょっと前ぐらいからですけども、小さい子どもでも参加させるようにしております。そして、顔を拭くとか、お水を口に運んであげるとか、そういうことを積極的に子どもに参加させるようにしております。そうすることによって、お子さんが死というものが怖くないということと、大切なものを失うということの悲しみということを知っていきます。その大切なものを失う悲しみを知ることによって、大切なものを大切にしていくという心が芽生えていくような気がします。

ですから、今の一般の病院では、たぶん小さなお子さんを臨終の席には立ち合わせないのではないかと思うんですけれども、できるだけ積極的に、しかも早い時期から立ち合わせるということは、ぜひ一般の病棟でもできることだと思いますので、していただきたいと思っております。

 

遠藤 私は、私を含めて、年寄りがいちばん最後にやる仕事は、子どもや孫に自分の死に方を見せることだと思っています。それでおじいちゃんとかおばあちゃんとか、自分をかわいがってくれた人が、背中をさすったり、足をさすったり、ごはんを食べさせてあげたり、一所懸命に自分たちがやってるんだけど、だんだん、だんだんと弱ってしまって、もうほんとに神様も仏様もないのかと子どもたちが思うときがありますね。それでほんとに苦しそうだなあと思って、つらい思いをしている時期がありまして、それでいよいよこんどはお別れというときになりますと、ある方は、主人のあれにも書きましたけど、ほんとに光輝くようなうれしそうな顔になったり、あるいはおだやかな顔になったりして、「さっきまでのおじいちゃんやおばあちゃんとはぜんぜん違う顔じゃない」て、子どもたちでも思いますね。それで自分の愛する人が死ぬ現場に立ち合って、「もしかしたらおじいちゃんやおばあちゃんはすごくいいところに行っちゃったのかもしれないな、あんな楽しそうな顔しているから、もしかしたら神様なんていないと思ってたけど、神様っているのかもしれないなあ」とかって、そういうふうに思う時期があって、それはもうほんとにだいじなだいじなことで、中学にもなった子どもたちをつかまえて、いじめで誰かが死んだ場合に、校長先生が命の大切さなんていうことをわざわざ教えるなんていうのは、ほんとに日本だけだと思うんです。マンガチックな話です。そんなことは家庭で教えるべきことですね。

で、やはり命の大切さということを学ぶとてもいい機会で、なるべくだったら、孫たちに死ぬところを見せたいですね。で、「おじいちゃんは病院で死んじゃったらしいから病院の霊安室にこれから行きましょう」では、やっぱり孫に伝わるものも伝わらない。

 

 

 

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