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そのためには、病む人の友達になる、死にゆく友達のそばにいてあげるという、シシリー・ソンダース先生が言われたこと、つまり「患者と共にありなさい」という言葉が深い意味をもっているということがわかるのです。ホスピスは建物ではない、患者と共にあるそのあり方がホスピスであって、それは一般の病院でもそれが具現されなくてはならないということを、このシシリー・ソンダース先生は私たちに教えてくれたのです。

ソンダース先生もずっと独身だったのですが、死にゆく患者に愛情をいだかれれたことがあったようです。二人あったそうです。そして、三人目の絵描きさんと結婚されました。私はソンダース先生に、「あなたは三人の人を愛したのだけど、亡くなって天国に行ったらどういうふうに会いますか」と聞きましたら、「ノープレブレム、ノープレブレム」と言って笑っておられました。

彼女の生き方から私たちはずい分教えられました。その中でも特に「ビー・ウイズ・ザ・ペイシェント」という言葉は非常に大切です。点滴をするときに、私は看護婦さんに言います、「点滴の数を数えることが仕事であると思って患者の顔を見ないで点滴の瓶を見ているナースがいるけれども、そうではなくて、あなたの忙しい時間を点滴しなさい。それがホスピスケアで、それが本当の愛のケアなのです」と。そういうことを私はケアする患者さんから数多く教えられてきたのです。

どうか皆さん、いろんな仕事をやっておられますが、どうか世界には多くの不幸な人があることを覚えながら、ものの潤沢な日本のなかに、そして子どもは潤沢さのためにスポイルされているなかに、分け与えるという気持ちが乏しくなったなかに、どうか、この原爆を経験した長崎の方は、分け与える、共に悩むということ、そのことによって皆さんの感性を高くすることによって、皆さんは死に向かって成長をする人間として伸びていかれることを、私は心から願って、私の講演を終わりたいと思います。

 

 

 

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